さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

野分の章

 
あるまじき       降りやまぬ       草食獣の        砂を嚙む        
傍観して        駅前の         新しき         継ぎ足しの       
山ひだの        詫びたくて       風呂敷の        奪ひしは        
クッキーの       乗り継ぎを       エッグノッグに     
 
 
 

03223
あるまじき 一夜一夜を 目盛りとし はるかに人を 置きて来りぬ
アルマジキ ヒトヨヒトヨヲ メモリトシ ハルカニヒトヲ オキテキタリヌ

『野分の章』(牧羊社 1978) p.175
【初出】 『短歌新聞』 1978.2 草食獣 (1)


03224
降りやまぬ 雪を見をれば 逃げ道を ふさがれてしまふ けものもあらむ
フリヤマヌ ユキヲミヲレバ ニゲミチヲ フサガレテシマフ ケモノモアラム

『野分の章』(牧羊社 1978) p.175
【初出】 『短歌新聞』 1978.2 草食獣 (2)


03225
草食獣の 鹿さへ原を 追はるると 読みてよりはかどる 仕事の如し
ソウショクジュウノ シカサヘハラヲ オハルルト ヨミテヨリハカドル シゴトノゴトシ

『野分の章』(牧羊社 1978) p.176
【初出】 『短歌新聞』 1978.2 草食獣 (3)


03226
砂を嚙む 一日なりしが 帰る雲 往く雲もみな 茜に染まる
スナヲカム ヒトヒナリシガ カエルクモ ユククモモミナ アカネニソマル

『野分の章』(牧羊社 1978) p.176
【初出】 『短歌新聞』 1978.2 草食獣 (5)


03227
傍観して をれずに言へば わが肩に かかり来む荷の まざまざと見ゆ
ボウカンシテ ヲレズニイヘバ ワガカタニ カカリコムニノ マザマザトミユ

『野分の章』(牧羊社 1978) p.176
【初出】 『短歌新聞』 1978.2 草食獣 (4)


03228
駅前の 広場にあがる 噴水の 穂と気づくまに 電車は発ちぬ
エキマエノ ヒロバニアガル フンスイノ ホトキヅクマニ デンシャハタチヌ

『野分の章』(牧羊社 1978) p.177
【初出】 『短歌新聞』 1978.2 草食獣 (8)


03229
新しき 家といふとも 夜に帰り 鍵穴をさぐる 思ひかはらぬ
アタラシキ イエトイフトモ ヨニカエリ カギアナヲサグル オモヒカハラヌ

『野分の章』(牧羊社 1978) p.177
【初出】 『短歌新聞』 1978.2 草食獣 (6)


03230
継ぎ足しの 歩廊の下の 赤土に 霜光る見ゆ 日の昇り来て
ツギタシノ ホロウノシタノ アカツチニ シモヒカルミユ ヒノノボリキテ

『野分の章』(牧羊社 1978) p.177
【初出】 『短歌新聞』 1978.2 草食獣 (7)


03231
山ひだの 雪の黄いろに かげる日は 寒しと思ふ 朝々に見て
ヤマヒダノ ユキノキイロニ カゲルヒハ サムシトオモフ アサアサニミテ

『野分の章』(牧羊社 1978) p.178
【初出】 『短歌新聞』 1978.2 草食獣 (9)


03232
詫びたくて 訪ね来しかと 思ひたる われをやさしむ 帰られてのち
ワビタクテ タズネキシカト オモヒタル ワレヲヤサシム カエラレテノチ

『野分の章』(牧羊社 1978) p.178
【初出】 『短歌新聞』 1978.2 草食獣 (11)


03233
風呂敷の 紺にくるまれ 鳥籠の かたちのままを 運び去られつ
フロシキノ コンニクルマレ トリカゴノ カタチノママヲ ハコビサラレツ

『野分の章』(牧羊社 1978) p.178
【初出】 『短歌新聞』 1978.2 草食獣 (10)


03234
奪ひしは われにあらずと 言ふのみに 夢にも告げず 人の名などは
ウバヒシハ ワレニアラズト イフノミニ ユメニモツゲズ ヒトノナナドハ

『野分の章』(牧羊社 1978) p.179
【初出】 『短歌新聞』 1978.2 草食獣 (13)


03235
クッキーの 型抜きをれば 花びらも 星のかたちも 美しからず
クッキーノ カタヌキヲレバ ハナビラモ ホシノカタチモ ウツクシカラズ

『野分の章』(牧羊社 1978) p.179
【初出】 『短歌新聞』 1978.2 草食獣 (12)


03236
乗り継ぎを 時刻表に調べ ゐたりしが 岬々に 夜をわが遊ぶ
ノリツギヲ ジコクヒョウニシラベ ヰタリシガ ミサキミサキニ ヨヲワガアソブ

『野分の章』(牧羊社 1978) p.179
【初出】 『短歌新聞』 1978.2 草食獣 (14)


03237
エッグノッグに 酔ひしは昨夜 すきとほる 元のグラスに 戻して蔵ふ
エッグノッグニ ヨヒシハサクヤ スキトホル モトノグラスニ モドシテシマフ

『野分の章』(牧羊社 1978) p.180
【初出】 『短歌新聞』 1978.2 草食獣 (15)