さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

野分の章

 
鳥かぶとの       仔犬より        山茶花の        覚えにくき       
灰皿を         遡行する        くらがりに       
 
 
 

03206
鳥かぶとの 花買ひ持てば 香にたちて 毒にあくがれ 来し日も久し
トリカブトノ ハナカヒモテバ カニタチテ ドクニアクガレ コシヒモヒサシ

『野分の章』(牧羊社 1978) p.168
【初出】 『形成』 1978.1 「無題」 (5)


03207
仔犬より 長く生くるとも 決まりゐず 頭を撫でやりし のみに戻り来
コイヌヨリ ナガクイクルトモ キマリヰズ ヅヲナデヤリシ ノミニモドリク

『野分の章』(牧羊社 1978) p.168
【初出】 『形成』 1978.1 「無題」 (3)


03208
山茶花の 白冴ゆる日よ 雪国に うまれし性を 今に保ちて
サザンカノ シロサユルヒヨ ユキグニニ ウマレシサガヲ イマニタモチテ

『野分の章』(牧羊社 1978) p.169
【初出】 『形成』 1978.1 「無題」 (4)


03209
覚えにくき 人の名言ひて 海彼なる 軍の蜂起を ニュースは伝ふ
オボエニクキ ヒトノナイヒテ カイヒナル グンノホウキヲ ニュースハツタフ

『野分の章』(牧羊社 1978) p.169
【初出】 『形成』 1978.1 「無題」 (2)


03210
灰皿を 清めて人を 待つごとき 思ひにゐたり 夕食のあと
ハイザラヲ キヨメテヒトヲ マツゴトキ オモヒニヰタリ ユウショクノアト

『野分の章』(牧羊社 1978) p.169
【初出】 『形成』 1978.1 「無題」 (6)


03211
遡行する 時間の如し メトロノームの 音のみさせて しばらくをれば
ソコウスル ジカンノゴトシ メトロノームノ オトノミサセテ シバラクヲレバ

『野分の章』(牧羊社 1978) p.170
【初出】 『形成』 1978.1 「無題」 (1)


03212
くらがりに 麻か何かを 綯ひゐたり めざめてほめく てのひら二枚
クラガリニ アサカナニカヲ ナヒヰタリ メザメテホメク テノヒラニマイ

『野分の章』(牧羊社 1978) p.170
【初出】 『VAN』 1977 桜花号 (5)