さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

野分の章

 
背信に         どこまでも       矢印の         少女らの        
引力の         人の名を        コンテナの       破滅型の        
映像は         散りそめし       ロジェ・ガレの     
 
 
 

03040
背信に 紙一重なる 思ひして 見返るビルは かすか茜す
ハイシンニ カミヒトエナル オモヒシテ ミカエルビルハ カスカアカネス

『野分の章』(牧羊社 1978) p.104
【初出】 『短歌』 1977.1 人形の靴 (1)


03041
どこまでも 犬として野を 遠ざかる 日ぐれはさびし むらがるものも
ドコマデモ イヌトシテノヲ トオザカル ヒグレハサビシ ムラガルモノモ

『野分の章』(牧羊社 1978) p.104
【初出】 『短歌』 1977.1 人形の靴 (2)


03042
矢印の 方へは行かず 帰り来ぬ つぼみの薔薇を 買ひたるのみに
ヤジルシノ カタヘハユカズ カエリキヌ ツボミノバラヲ カヒタルノミニ

『野分の章』(牧羊社 1978) p.105
【初出】 『短歌』 1977.1 人形の靴 (3)


03043
少女らの 覗きてすぎし 飾り窓 人形は繻子の トーシューズ履く
オトメラノ ノゾキテスギシ カザリマド ニンギョウハシュスノ トーシューズハク

『野分の章』(牧羊社 1978) p.105
【初出】 『短歌』 1977.1 人形の靴 (4)


03044
引力の やさしき日なり 黒土に 輪をひろげゆく 銀杏の落ち葉
インリョクノ ヤサシキヒナリ クロツチニ ワヲヒロゲユク イチョウノオチバ

『野分の章』(牧羊社 1978) p.105
【初出】 『短歌』 1977.1 人形の靴 (5)


03045
人の名を 呼ぶアナウンス 間をおきて くり返されぬ 霧の操車場に
ヒトノナヲ ヨブアナウンス マヲオキテ クリカエサレヌ キリノヤードニ

『野分の章』(牧羊社 1978) p.106
【初出】 『短歌』 1977.1 人形の靴 (6)


03046
コンテナの 雪にまみれて 停りゐき われはわが持つ ものを怖れき
コンテナノ ユキニマミレテ トマリヰキ ワレハワガモツ モノヲオソレキ

『野分の章』(牧羊社 1978) p.106
【初出】 『短歌』 1977.1 人形の靴 (7)


03047
破滅型の もう一人のわれが ひろげたる 翼の隙を 突かるる勿れ
ハメツガタノ モウヒトリノワレガ ヒロゲタル ツバサノスキヲ ツカルルナカレ

『野分の章』(牧羊社 1978) p.106
【初出】 『短歌』 1977.1 人形の靴 (8)


03048
映像は かくまざまざと 二つめの むくろのありし 位置を伝ふる
エイゾウハ カクマザマザト フタツメノ ムクロノアリシ イチヲツタフル

『野分の章』(牧羊社 1978) p.107
【初出】 『短歌』 1977.1 人形の靴 (9)


03049
散りそめし 薔薇のたちまち 散りつくす かかる速度にも 堪へねばならず
チリソメシ バラノタチマチ チリツクス カカルソクドニモ タヘネバナラズ

『野分の章』(牧羊社 1978) p.107
【初出】 『短歌』 1977.1 人形の靴 (10)


03050
ロジェ・ガレの 香水といへり 部屋中に 撒きて無頼の 一日も終る
ロジェガレノ コウスイトイヘリ ヘヤジュウニ マキテブライノ ヒトヒモオワル

『野分の章』(牧羊社 1978) p.107
【初出】 『短歌』 1977.1 人形の靴 (11)