さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

野分の章

 
ガラスごしの      決めゐたる       夕立の         透明の         
逢ひがたき       すきとほる       霧のなかに       わが呼びし       
 
 
 

03003
ガラスごしの 半径のなか 一面に 木の葉さわだつ 雨に打たれて
ガラスゴシノ ハンケイノナカ イチメンニ コノハサワダツ アメニウタレテ

『野分の章』(牧羊社 1978) p.88


03004
決めゐたる 指輪も忘れて 出でて来ぬ 告げてはならぬ ことのみ多き
キメヰタル ユビワモワスレテ イデテコヌ ツゲテハナラヌ コトノミオオキ

『野分の章』(牧羊社 1978) p.88


03005
夕立の あとの茜を 仰ぎ来て 風見のゆるく まはれるに会ふ
ユウダチノ アトノアカネヲ アオギキテ カザミノユルク マハレルニアフ

『野分の章』(牧羊社 1978) p.89


03006
透明の 櫛のごときを 思ひつつ 仰ぎてをれば ゆらぐ篁
トウメイノ クシノゴトキヲ オモヒツツ アオギテヲレバ ユラグタカムラ

『野分の章』(牧羊社 1978) p.89


03007
逢ひがたき 日を重ねつつ 町角に 青くともれる 電話ボックス
アヒガタキ ヒヲカサネツツ マチカドニ アオクトモレル デンワボックス

『野分の章』(牧羊社 1978) p.89


03008
すきとほる タイそよがせて 歩むとも 紛らはし得む さびしさならず
スキトホル タイソヨガセテ アユムトモ マギラハシエム サビシサナラズ

『野分の章』(牧羊社 1978) p.90


03009
霧のなかに 幾日もゐし 思ひして タオルをひたす つめたき水に
キリノナカニ イクニチモヰシ オモヒシテ タオルヲヒタス ツメタキミズニ

『野分の章』(牧羊社 1978) p.90


03010
わが呼びし 声のきこゆる 夜もあらむ 他界の女の 声のごとくに
ワガヨビシ コエノキコユル ヨモアラム タカイノオミナノ コエノゴトクニ

『野分の章』(牧羊社 1978) p.90