さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

雲の地図

 
音のして        まつはれる       白地図に        傷つきて        
人形の         一夜寝て        這ひ松の        クレーン車も      
描きあげむ       石畳          濡れし痕の       道のべに        
ポケットに       
 
 
 

02643
音のして 闇に目ざむる 驚きは 野に棲む兎も われもかはらぬ
オトノシテ ヤミニメザムル オドロキハ ノニスムウサギモ ワレモカハラヌ

『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.180
【初出】 『短歌研究』 1974.4 あえかに雪の (1)


02644
まつはれる 霧の流れを うす青く 染めて明けゆく いづこの森か
マツハレル キリノナガレヲ ウスアオク ソメテアケユク イヅコノモリカ

『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.180
【初出】 『短歌研究』 1974.4 あえかに雪の (2)


02645
白地図に 聚落を埋め 川を塗り ひとりはさびし 家あることも
ハクチズニ シュウラクヲウメ カワヲヌリ ヒトリハサビシ イエアルコトモ

『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.181
【初出】 『短歌研究』 1974.4 あえかに雪の (3)


02646
傷つきて ゐるのみの日と 思はねど しづくするとき 光るつららは
キズツキテ ヰルノミノヒト オモハネド シヅクスルトキ ヒカルツララハ

『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.181
【初出】 『短歌研究』 1974.4 あえかに雪の (4)


02647
人形の やうに吊りあげ られゐしが くづをれゆきぬ 影から先に
ニンギョウノ ヤウニツリアゲ ラレヰシガ クヅヲレユキヌ カゲカラサキニ

『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.181
【初出】 『短歌研究』 1974.4 あえかに雪の (5)


02648
一夜寝て とれぬ疲れか 道の上に 落ちゐるものの 穏やかならぬ
ヒトヨネテ トレヌツカレカ ミチノウエニ オチヰルモノノ オダヤカナラヌ

『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.182
【初出】 『短歌研究』 1974.4 あえかに雪の (6)


02649
這ひ松の 茂みをひろげ ゆく仕事 幾人と知れず みなかがみゐて
ハヒマツノ シゲミヲヒロゲ ユクシゴト イクタリトシレズ ミナカガミヰテ

『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.182
【初出】 『短歌研究』 1974.4 あえかに雪の (7)


02650
クレーン車も かき消されつつ 降りやまぬ 雪のひと日の 目の賑はひよ
クレーンシャモ カキケサレツツ フリヤマヌ ユキノヒトヒノ メノニギハヒヨ

『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.182
【初出】 『短歌研究』 1974.4 あえかに雪の (8)


02651
描きあげむ 日のいつ知れぬ われの絵に ヒマラヤ杉は うなだれて立つ
カキアゲム ヒノイツシレヌ ワレノエニ ヒマラヤスギハ ウナダレテタツ

『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.183
【初出】 『短歌研究』 1974.4 あえかに雪の (9)


02652
石畳 いつしか切れて 雪の道 こよひ会はねば 生涯会へず
イシダタミ イツシカキレテ ユキノミチ コヨヒアハネバ ショウガイアヘズ

『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.183
【初出】 『短歌研究』 1974.4 あえかに雪の (10)


02653
濡れし痕の ありて届ける 封筒に 人の書きたる わが名けぶらふ
ヌレシアトノ アリテトドケル フウトウニ ヒトノカキタル ワガナケブラフ

『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.183
【初出】 『短歌研究』 1974.4 あえかに雪の (11)


02654
道のべに 消残る雪の くぐまりに かかづらふわが 歩みも久し
ミチノベニ ケノコルユキノ クグマリニ カカヅラフワガ アユミモヒサシ

『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.184
【初出】 『短歌研究』 1974.4 あえかに雪の (12)


02655
ポケットに 入れしままなる もろ手より くすぶり出づる 何の記憶か
ポケットニ イレシママナル モロテヨリ クスブリイヅル ナンノキオクカ

『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.184
【初出】 『短歌研究』 1974.4 あえかに雪の (13)