さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

雲の地図

 
山脈も         確かめたき       花びらの        指人形の        
隔たりを        いつも誰かを      夕焼けが        点線を         
長き雨         薄青く         
 
 
 

02275
山脈も 芽ぐむ木立も 遠く澄み 空からこはれて くるやうな日よ
サンミャクモ メグムコダチモ トオクスミ ソラカラコハレテ クルヤウナヒヨ

『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.48


02276
確かめたき ことのあるとき 額ぶちに 嵌め込まれゐる 木の一部分
タシカメタキ コトノアルトキ ガクブチニ ハメコマレヰル キノイチブブン

『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.48


02277
花びらの ゆるみゐし薔薇 カーテンの 襞に触れたる のみに崩るる
ハナビラノ ユルミヰシバラ カーテンノ ヒダニフレタル ノミニクズルル

『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.49
【初出】 『おおみや』 1972.1 風の凪ぐとき (5)


02278
指人形の 少女が持てる 花籠に 花の無かりし ことのみ思ふ
ギニヨールノ オトメガモテル ハナカゴニ ハナノナカリシ コトノミオモフ

『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.49


02279
隔たりを 隔たりとして 置くゆゑか 暮れゆく街が 窓に美し
ヘダタリヲ ヘダタリトシテ オクユヱカ クレユクマチガ マドニウツクシ

『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.49


02280
いつも誰かを 探してゐるやうな われの目と 気づきて見やる 遠き木立を
イツモタレカヲ サガシテヰルヤウナ ワレノメト キヅキテミヤル トオキコダチヲ

『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.50


02281
夕焼けが 褪せゆく街の 灰いろに 影にじませて 立つ木も人も
ユウヤケガ アセユクマチノ ハイイロニ カゲニジマセテ タツキモヒトモ

『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.50


02282
点線を 斜に幾重 にも引けば 雨の街となる 少女らの絵は
テンセンヲ ナナメニイクヘ ニモヒケバ アメノマチトナル オトメラノエハ

『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.50


02283
長き雨 あがらむとして 日のくれを 水晶のやうに 光りつつ降る
ナガキアメ アガラムトシテ ヒノクレヲ スイショウノヤウニ ヒカリツツフル

『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.51


02284
薄青く コップは乾き 割れやすい 五月の朝の 空を思はす
ウスアオク コツプハカワキ ワレヤスイ サツキノアサノ ソラヲオモハス

『雲の地図』(短歌新聞社 1975) p.51