さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

花溢れゐき

 
咲き残る        もの縫ひて       みづからの       昼のサイレン      
少年の         思ひ来し        もとのわれに      帰り来て        
泥のごとき       青柿を         駆けこみて       ややありて       
稀薄なる        雲多き         橋の上を        曇り日に        
ふり向けば       
 
 
 

01914
咲き残る ひなげしの白 地のひびき 空のひびきに さとき花びら
サキノコル ヒナゲシノシロ チノヒビキ ソラノヒビキニ サトキハナビラ

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.143
【初出】 『短歌』 1969.8 雲多き日々 (1)


01915
もの縫ひて 二階にあれば さまざまの 地上の音の われに集まる
モノヌヒテ ニカイニアレバ サマザマノ チジョウノオトノ ワレニアツマル

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.143
【初出】 『短歌』 1969.8 雲多き日々 (2)


01916
みづからの 手では滅ぶな といふ言葉 思ひ出づるは いかなる時か
ミヅカラノ テデハホロブナ トイフコトバ オモヒイヅルハ イカナルトキカ

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.144
【初出】 『短歌』 1969.8 雲多き日々 (3)


01917
昼のサイレン 聞こえてゐしが 野を遠く 積み木のごとき 貨車流れゆく
ヒルノサイレン キコエテヰシガ ノヲトオク ツミキノゴトキ カシャナガレユク

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.144
【初出】 『短歌』 1969.8 雲多き日々 (4)


01918
少年の 義足のあとを 歩みつつ 曲り角まで しばらく間あり
ショウネンノ ギソクノアトヲ アユミツツ マガリカドマデ シバラクマアリ

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.144
【初出】 『短歌』 1969.8 雲多き日々 (5)


01919
思ひ来し ことの途切れて 黒んぼの マヌカンが立つ 店先を過ぐ
オモヒコシ コトノトギレテ クロンボノ マヌカンガタツ ミセサキヲスグ

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.145
【初出】 『短歌』 1969.8 雲多き日々 (7)


01920
もとのわれに 戻りて歩む 夜の道 吹かれゐるもの みな音を立つ
モトノワレニ モドリテアユム ヨルノミチ フカレヰルモノ ミナオトヲタツ

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.145
【初出】 『短歌』 1969.8 雲多き日々 (13)


01921
帰り来て もの言ふとせぬ われを措き 光るまでタイルを 磨く妹
カエリキテ モノイフトセヌ ワレヲオキ ヒカルマデタイルヲ ミガクイモウト

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.145
【初出】 『短歌』 1969.8 雲多き日々 (14)


01922
泥のごとき 雲ばかり見て ゐし夢の 醒めつつ風の 音がひろがる
ドロノゴトキ クモバカリミテ ヰシユメノ サメツツカゼノ オトガヒロガル

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.146
【初出】 『短歌』 1969.8 雲多き日々 (17)


01923
青柿を 拾へば土の 冷え持てり 何に朝より 苦しきわれか
アオガキヲ ヒロヘバツチノ ヒエモテリ ナンニアサヨリ クルシキワレカ

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.146
【初出】 『短歌』 1969.8 雲多き日々 (18)


01924
駆けこみて 来し人の息 しづまらぬ ままトンネルに 入りゆく電車
カケコミテ コシヒトノイキ シヅマラヌ ママトンネルニ イリユクデンシャ

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.146
【初出】 『短歌』 1969.8 雲多き日々 (20)


01925
ややありて 筆談に移る さま見つつ 人を待つ間の 次第に長し
ヤヤアリテ ヒツダンニウツル サマミツツ ヒトヲマツマノ シダイニナガシ

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.147
【初出】 『短歌』 1969.8 雲多き日々 (24)


01926
稀薄なる 思ひにゐしが 黒き傘 不意にすぼめて 人の入り来る
キハクナル オモヒニヰシガ クロキカサ フイニスボメテ ヒトノイリクル

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.147
【初出】 『短歌』 1969.8 雲多き日々 (25)


01927
雲多き 日々となりつつ 黄の花粉 こぼして終る マーガレットも
クモオオキ ヒビトナリツツ キノカフン コボシテオワル マーガレットモ

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.147
【初出】 『短歌』 1969.8 雲多き日々 (27)


01928
橋の上を 風過ぎむとし 青鳩の 逃ぐる構へを 見せてとどまる
ハシノウエヲ カゼスギムトシ アオバトノ ニグルカマヘヲ ミセテトドマル

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.148
【初出】 『短歌』 1969.8 雲多き日々 (26)


01929
曇り日に かぎろひわたる 丘の上 白き穂わたの ひとところ舞ふ
クモリビニ カギロヒワタル オカノウエ シロキホワタノ ヒトトコロマフ

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.148
【初出】 『短歌』 1969.8 雲多き日々 (8)


01930
ふり向けば いつの間に来て 草むらに 音もなくゐる シャガールの牛
フリムケバ イツノマニキテ クサムラニ オトモナクヰル シャガールノウシ

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.148
【初出】 『短歌』 1969.8 雲多き日々 (9)