さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

花溢れゐき

 
手袋に         道幅を         花火の如き       つぶやきの       
老い著き        焼き場など       何事か         目薬を         
インク壺に       香りよき        尾を閉ぢて       サブリナの       
杭抜きし        珈琲も         
 
 
 

01900
手袋に 十指収めて 帰らむに チュールに透けて 光るマニキュア
テブロクニ ジッシオサメテ カエラムニ チュールニスケテ ヒカルマニキュア

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.138
【初出】 『短歌新聞』 1969.8 サブリナの靴 (1)


01901
道幅を 覆ひてビルの 影深し 全きわれの 歩むにあらず
ミチハバヲ オオヒテビルノ カゲフカシ マッタキワレノ アユムニアラズ

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.138
【初出】 『短歌新聞』 1969.8 サブリナの靴 (2)


01902
花火の如き アガパンサスも 過ぎむとし おもたき雨の 日もすがら降る
ハナビノゴトキ アガパンサスモ スギムトシ オモタキアメノ ヒモスガラフル

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.139
【初出】 『短歌新聞』 1969.8 サブリナの靴 (3)


01903
つぶやきの ふとよみがへり ピタゴラスの 定理といふを 今に記憶す
ツブヤキノ フトヨミガヘリ ピタゴラスノ テイリトイフヲ イマニキオクス

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.139
【初出】 『短歌新聞』 1969.8 サブリナの靴 (4)


01904
老い著き インコに日ごと 摘むはこべ 白く小さき 花持ち始む
オイシルキ インコニヒゴト ツムハコベ シロクチイサキ ハナモチハジム

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.139
【初出】 『形成』 1969.9 「無題」 (2)


01905
焼き場など あると聞かねど 野の果てを 吹きちぎられて 煙飛ぶ見ゆ
ヤキバナド アルトキカネド ノノハテヲ フキチギラレテ ケムリトブミユ

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.140
【初出】 『短歌新聞』 1969.8 サブリナの靴 (7)


01906
何事か ありて駆けゆく 犬に会ひ 道はふたたび ひるがほの坂
ナニゴトカ アリテカケユク イヌニアヒ ミチハフタタビ ヒルガホノサカ

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.140
【初出】 『短歌新聞』 1969.8 サブリナの靴 (6)


01907
目薬を さしてしばらく 眼閉づ まぼろしばかり 見つつ過ぎむか
メグスリヲ サシテシバラク マナコトヅ マボロシバカリ ミツツスギムカ

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.140
【初出】 『短歌新聞』 1969.8 サブリナの靴 (8)


01908
インク壺に インク足し来て 坐りたり 立ちゐたる間に 何か乱るる
インクツボニ インクタシキテ スワリタリ タチヰタルマニ ナニカミダルル

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.141
【初出】 『形成』 1971.6 「無題」 (4)


01909
香りよき 石鹼に揉む ハンカチの 黄の薔薇なすを てのひらに乗す
カオリヨキ セッケンニモム ハンカチノ キノバラナスヲ テノヒラニノス

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.141
【初出】 『形成』 1971.1 「無題」 (2)


01910
尾を閉ぢて 眠れる見れば キルケの杖に 変へられしわが 犬かも知れず
オヲトヂテ ネムレルミレバ キルケノツエニ カヘラレシワガ イヌカモシレズ

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.141
【初出】 『現代短歌』 1969.11 カリフの言葉 (12)


01911
サブリナの 靴履くことも なく置きて をりをりさびし 妹の歌
サブリナノ クツハクコトモ ナクオキテ ヲリヲリサビシ イモウトノウタ

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.142
【初出】 『短歌新聞』 1969.8 サブリナの靴 (9)


01912
杭抜きし 跡のくぼみの くれぐれに 光りつつ水の たまれるも知る
クイヌキシ アトノクボミノ クレグレニ ヒカリツツミズノ タマレルモシル

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.142
【初出】 『短歌新聞』 1969.8 サブリナの靴 (11)


01913
珈琲も 断ちて癒えゆく 日を待つに 不意のごとくに 咲く合歓の花
コーヒーモ タチテイエユク ヒヲマツニ フイノゴトクニ サクネムノハナ

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.142
【初出】 『短歌新聞』 1969.8 サブリナの靴 (15)