さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

花溢れゐき

 
きりもなく       抜け道と        帰るとも        こだはれば       
うす青き        草にうもれ       幾たびも        さはやかに       
勾玉に         ゆるやかに       草を食む        死ぬことを       
灰いろの        鑿の音         
 
 
 

01646
きりもなく 羽虫湧く空 ゆふづきて 雲のながれの 速くなりゆく
キリモナク ハムシワクソラ ユフヅキテ クモノナガレノ ハヤクナリユク

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.47
【初出】 『短歌研究』 1967.3 石の船 (15)


01647
抜け道と いふを教はり たどり来て 焼け木のうかぶ 掘割りに出づ
ヌケミチト イフヲオソハリ タドリキテ ヤケギノウカブ ホリワリニイヅ

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.47
【初出】 『短歌研究』 1967.3 石の船 (21)


01648
帰るとも 行くとも見ゆる 水の上 落ちし油紋は ただにひろがる
カエルトモ ユクトモミユル ミズノウエ オチシユモンハ タダニヒロガル

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.48
【初出】 『短歌研究』 1967.3 石の船 (16)


01649
こだはれば きりなきものを 尉面の かげる間多き 雨季は近づく
コダハレバ キリナキモノヲ ジヨウメンノ カゲルマオオキ ウキハチカヅク

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.48
【初出】 『形成』 1967.4 「無題」 (5)


01650
うす青き ガラス散らばる 道の上 こまかき音を 掃きよせてゆく
ウスアオキ ガラスチラバル ミチノウエ コマカキオトヲ ハキヨセテユク

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.48
【初出】 『短歌研究』 1967.3 石の船 (2)


01651
草にうもれ 消火栓ある あたりより 朝々に湧く 藁雀のこゑは
クサニウモレ ショウカセンアル アタリヨリ アサアサニワク アヲジノコヱハ

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.49
【初出】 『短歌研究』 1967.3 石の船 (3)


01652
幾たびも 電話を聞きに 立ちゆきて 継ぎ目だらけの 罫を引きゐる
イクタビモ デンワヲキキニ タチユキテ ツギメダラケノ ケイヲヒキヰル

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.49
【初出】 『短歌研究』 1967.3 石の船 (12)


01653
さはやかに コピイの漢字 揃ふ日の 人に知られぬ よろこび一つ
サハヤカニ コピイノカンジ ソロフヒノ ヒトニシラレヌ ヨロコビヒトツ

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.49
【初出】 『短歌研究』 1966.1 冬の素描 (51)


01654
勾玉に 過ぎにし遠き 時間など 思ひてをれば 笹の葉が鳴る
マガタマニ スギニシトオキ ジカンナド オモヒテヲレバ ササノハガナル

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.50
【初出】 『短歌研究』 1966.1 冬の素描 (72)


01655
ゆるやかに 遠景をめぐる クレーン車の きらめくものを ふりこぼしゆく
ユルヤカニ エンケイヲメグル クレーンシャノ キラメクモノヲ フリコボシユク

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.50
【初出】 『短歌研究』 1966.1 冬の素描 (48)


01656
草を食む 馬などの不意に やさしくて たんぽぽの黄の そよげるを見つ
クサヲハム ウマナドノフイニ ヤサシクテ タンポポノキノ ソヨゲルヲミツ

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.50
【初出】 『現代』 1969.11 青のストール (116)


01657
死ぬことを 知らぬ揚羽が 飛びゆくと 言ひき再び 起つ日なかりき
シヌコトヲ シラヌアゲハガ トビユクト イヒキフタタビ タツヒナカリキ

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.51
【初出】 『短歌研究』 1967.3 石の船 (83)


01658
灰いろの 光のなかに 時ながく 編みゐし紐も 醒めて跡なし
ハイイロノ ヒカリノナカニ トキナガク アミヰシヒモモ サメテアトナシ

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.51
【初出】 『短歌研究』 1967.3 石の船 (69)


01659
鑿の音 風の切れめに よみがへり 石の船など 刻むならずや
ノミノオト カゼノキレメニ ヨミガヘリ イシノフネナド キザムナラズヤ

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.51
【初出】 『短歌研究』 1967.3 石の船 (85)