さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

花溢れゐき

 
幼ならは        釈明を         たのしみて       ものの香の       
たれよりも       うすら寒き       人の住む        対岸の         
青木の実        タラップに       唐突に         をりをりに       
雪を見て        合歓の木の       
 
 
 

01632
幼ならは 雪をよごしし のみに去り 「花いちもんめ」の 唄わが歌ふ
オサナラハ ユキヲヨゴシシ ノミニサリ ハナイチモンメノ ウタワガウタフ

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.42
【初出】 『短歌研究』 1967.3 石の船 (77)


01633
釈明を 聞かねばならぬ 寂しさに 促すこゑを 待ちて立ちゆく
シャクメイヲ キカネバナラヌ サビシサニ ウナガスコヱヲ マチテタチユク

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.42
【初出】 『短歌研究』 1967.3 石の船 (73)


01634
たのしみて 待つこと淡き 日々ながら レースの花の 白々と満つ
タノシミテ マツコトアワキ ヒビナガラ レースノハナノ シロジロトミツ

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.43
【初出】 『形成』 1966.11 「無題」 (3)


01635
ものの香の まつはるごとき 日のゆふべ 街へ出でゆく 用を作りて
モノノカノ マツハルゴトキ ヒノユフベ マチヘイデユク ヨウヲツクリテ

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.43
【初出】 『形成』 1966.11 「無題」 (1)


01636
たれよりも 遠き一人と 思ふとき ザイス・イコンの カメラも古りぬ
タレヨリモ トオキヒトリト オモフトキ ザイス・イコンノ カメラモフリヌ

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.43
【初出】 『短歌研究』 1967.3 石の船 (91)


01637
うすら寒き 日のくれに来て 荷を置きぬ 足傾ける ベンチの上に
ウスラサムキ ヒノクレニキテ ニヲオキヌ アシカタムケル ベンチノウエニ

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.44
【初出】 『形成』 1969.10 「無題」 (2)


01638
人の住む 気配もなくて 冬枯れを 映すばかりと なるガラス窓
ヒトノスム ケハイモナクテ フユガレヲ ウツスバカリト ナルガラスマド

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.44
【初出】 『短歌研究』 1967.3 石の船 (61)


01639
対岸の 夕日に遠く 屋根光り 石切る音の をりをり届く
タイガンノ ユウヒニトオク ヤネヒカリ イシキルオトノ ヲリヲリトドク

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.44
【初出】 『形成』 1967.2 「無題」 (1)


01640
青木の実 葉がくれに照る ことを言ひ とりとめのなき 別れをしたり
アオキノミ ハガクレニテル コトヲイヒ トリトメノナキ ワカレヲシタリ

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.45
【初出】 『短歌研究』 1966.1 冬の素描 (2)


01641
タラップに 片足かけて 振り向ける かの日の笑顔 再びは見ず
タラップニ カタアシカケテ フリムケル カノヒノエガオ フタタビハミズ

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.45
【初出】 『形成』 1966.9 「無題」 (1)


01642
唐突に 電話が鳴りて 眼先に 人の使へる ナイフ光りつ
トウトツニ デンワガナリテ マナサキニ ヒトノツカヘル ナイフヒカリツ

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.45
【初出】 『形成』 1967.3 「無題」 (2)


01643
をりをりに 濡らし来て使ふ 海綿の 黒ずみてわれの よごれの如し
ヲリヲリニ ヌラシキテツカフ カイメンノ クロズミテワレノ ヨゴレノゴトシ

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.46
【初出】 『短歌研究』 1967.3 石の船 (59)


01644
雪を見て 日すがら臥り ゐしといふ 何しゐたらむ かの日のわれは
ユキヲミテ ヒスガラコヤリ ヰシトイフ ナニシヰタラム カノヒノワレハ

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.46
【初出】 『現代』 1969.11 青のストール (96)


01645
合歓の木の 遅き芽ぶきを 待つこころ 二重星の位置を 夜々に仰ぎて
ネムノキノ オソキメブキヲ マツココロ ミザルノイチヲ ヨヨニアオギテ

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.46
【初出】 『形成』 1966.5 「無題」 (4)