さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

花溢れゐき

 
ガラス戸の       ゆくりなく       父母の         墓原の         
妹と          貝塚の         埋めたての       巻き貝の        
触発を         かぶり見て       カドリール       緋の魚の        
シチリヤの       くちずさむ       
 
 
 

01596
ガラス戸の 雨のしづくに 灯がともり 一つ一つの われを過ぎゆく
ガラスドノ アメノシヅクニ ヒガトモリ ヒトツヒトツノ ワレヲスギユク

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.28
【初出】 『形成』 1966.9 「無題」 (4)


01597
ゆくりなく 心は憩ふ 勾玉の くぼみに溜まる 埃拭きゐて
ユクリナク ココロハイコフ マガタマノ クボミニタマル ホコリフキヰテ

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.28
【初出】 『形成』 1966.10 「無題」 (6)


01598
父母の 声よみがへる 季節かと 河原にながく 楤の芽を摘む
チチハハノ コエヨミガヘル キセツカト カワラニナガク タラノメヲツム

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.29
【初出】 『形成』 1966.5 「無題」 (4)


01599
墓原の ほとりに棲める 年月に 聞き分けて烈し 鴉の言葉
ハカハラノ ホトリニスメル トシツキニ キキワケテハゲシ カラスノコトバ

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.29
【初出】 『形成』 1966.9 「無題」 (7)


01600
妹と くらす月日に 梟の 時計も古りて 鳴かずなりたり
イモウトト クラスツキヒニ フクロウノ トケイモフリテ ナカズナリタリ

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.29
【初出】 『形成』 1966.11 「無題」 (6)


01601
貝塚の 跡しろじろと 乾きゐて まぼろしの海は いづこより鳴る
カイヅカノ アトシロジロト カワキヰテ マボロシノウミハ イヅコヨリナル

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.30
【初出】 『形成』 1966.2 「無題」 (7)


01602
埋めたての 成りし沼尻 草萌えの 色はいつしか 砂礫を蔽ふ
ウメタテノ ナリシヌマジリ クサモエノ イロハイツシカ サレキヲオオフ

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.30
【初出】 『形成』 1966.5 「無題」 (1)


01603
巻き貝の 一粒をわが てのひらに 置きて駆け去る 女童も無き
マキガイノ イチリュウヲワガ テノヒラニ オキテカケサル メワラハモナキ

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.30
【初出】 『短歌研究』 1966.1 冬の素描 (98)


01604
触発を 下待ちてゐたる われかとも 曇りの街を 行きつつ思ふ
ショクハツヲ シタマチテヰタル ワレカトモ クモリノマチヲ ユキツツオモフ

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.31
【初出】 『形成』 1966.11 「無題」 (2)


01605
かぶり見て 人は買ひゆく 純白の 羽毛のそよぐ 春の帽子を
カブリミテ ヒトハカヒユク ジュンパクノ ウモウノソヨグ ハルノボウシヲ

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.31
【初出】 『短歌研究』 1966.1 冬の素描 (81)


01606
カドリール 踊る輪などの はずみつつ 映る影絵も ながく続かず
カドリール オドルワナドノ ハズミツツ ウツルカゲエモ ナガクツヅカズ

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.31
【初出】 『短歌研究』 1966.1 冬の素描 (94)


01607
緋の魚の むらがりて来る 夢なりき 目ざめし闇に 水の音する
ヒノウオノ ムラガリテクル ユメナリキ メザメシヤミニ ミズノオトスル

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.32
【初出】 『形成』 1966.7 「無題」 (3)


01608
シチリヤの 島をいろどる 花と告げて スヰートピーの 種子送り来ぬ
シチリヤノ シマヲイロドル ハナトツゲテ スヰートピーノ シュシオクリコキヌ

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.32
【初出】 『形成』 1966.2 「無題」 (1)


01609
くちずさむ ミニヨンの歌 インコらの 卵は何の 色に孵らむ
クチズサム ミニヨンノウタ インコラノ タマゴハナンノ イロニカヘラム

『花溢れゐき』(短歌研究社 1971) p.32
【初出】 『形成』 1966.3 「無題」 (5)