さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

無数の耳

 
わが家の        亡き母と        手を触るる       灰色の         
古渡りの        姉妹にて        髪重き         雪明り         
 
 
 

01430
わが家の 前を過ぎつつ うらがなし 家の中にて 小鳥が歌ふ
ワガイエノ マエヲスギツツ ウラガナシ イエノナカニテ コトリガウタフ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.195


01431
亡き母と 行きしはどこの 坂ならむ 青き灯吊りて 虫を売りゐき
ナキハハト ユキシハドコノ サカナラム アオキヒツリテ ムシヲウリヰキ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.195


01432
手を触るる ものなべて凍る 魔法などに こがれて過ぎし 少女の日あり
テヲフルル モノナベテコオル マホウナドニ コガレテスギシ オトメノヒアリ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.196


01433
灰色の 靄のかぶさり 来る夕べ コーヒーの粉 こぼれて匂ふ
ハイイロノ モヤノカブサリ クルユウベ コーヒーノコナ コボレテニオフ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.196


01434
古渡りの 南蛮の壺 割りし日よ 好悪はげしき 幼な子なりき
コワタリノ ナンバンノツボ ワリシヒヨ カウヲハゲシキ オサナゴナリキ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.196


01435
姉妹にて くらす身の上 似かよへば 声をかけあふ 通りすがりに
シマイニテ クラスミノウエ ニカヨヘバ コエヲカケアフ トオリスガリニ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.197


01436
髪重き 感じにゐしが 昼過ぎて 思ひ直せし ごとく日のさす
カミオモキ カンジニヰシガ ヒルスギテ オモヒナオセシ ゴトクヒノサス

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.197


01437
雪明り 窓にさす夜を めざめたる 籠のインコの ささめきあへり
ユキアカリ マドニサスヨヲ メザメタル カゴノインコノ ササメキアヘリ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.197