さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

無数の耳

 
不知火の        選ばれて        風落ちし        幾たびか        
死後の火を       ひび入りて       つぎつぎに       さすらひの       
 
 
 

01398
不知火の 夜の近づくを 告げて来て 君も寂しき 過去を持つ
シラヌヒノ ヨノチカヅクヲ ツゲテキテ キミモサビシキ スギユキヲモツ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.182
【初出】 『彩』 1965.6 濡れし落ち葉 (1)


01399
選ばれて 化石となると いふ言葉 濡れし落ち葉を 掃きつつ思ふ
エラバレテ カセキトナルト イフコトバ ヌレシオチバヲ ハキツツオモフ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.182
【初出】 『彩』 1965.6 濡れし落ち葉 (3)


01400
風落ちし ゆふべとなりて 行く水は 浅瀬の音を 立て始めたり
カゼオチシ ユフベトナリテ ユクミズハ アサセノオトヲ タテハジメタリ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.183
【初出】 『彩』 1965.6 濡れし落ち葉 (4)


01401
幾たびか 夜霧の原に 出でて呼ぶ 放れし仔犬 呼ぶごとくして
イクタビカ ヨギリノハラニ イデテヨブ ハナレシコイヌ ヨブゴトクシテ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.183
【初出】 『形成』 1964.4 「無題」 (2)


01402
死後の火を 畏れゐし母 水晶の 念珠ばかりが 地下に残らむ
シゴノヒヲ オソレヰシハハ スイショウノ ネンジュバカリガ チカニノコラム

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.183
【初出】 『彩』 1965.6 濡れし落ち葉 (7)


01403
ひび入りて 伏せおく大き 甕ひとつ みどり児の声 漏るる夜無きか
ヒビイリテ フセオクオオキ カメヒトツ ミドリゴノコエ モルルヨナキカ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.184
【初出】 『彩』 1965.6 濡れし落ち葉 (8)


01404
つぎつぎに 生み続けたる 蛾のむれの はばたく音に まみれて眠る
ツギツギニ ウミツヅケタル ガノムレノ ハバタクオトニ マミレテネムル

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.184
【初出】 『彩』 1965.6 濡れし落ち葉 (9)


01405
さすらひの 心朝より きざしゐて 枯れ木を踏めば 音のはろけさ
サスラヒノ ココロアサヨリ キザシヰテ カレキヲフメバ オトノハロケサ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.184
【初出】 『形成』 1964.6 「無題」 (3)