さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

無数の耳

 
屋上の         シヤンデリアの     高まりて        草はらの        
そそのかす       蝙蝠の         なめらかに       坂道の         
石膏の         繃帯に         潮鳴りの        
 
 
 

01353
屋上の 噴泉を見て 降り来しに 松葉杖など 人は買ひゐる
オクジョウノ フンセンヲミテ オリコシニ マツバヅエナド ヒトハカヒヰル

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.165
【初出】 『彩』 1965.6 潮鳴り (2)


01354
シヤンデリアの あかりの一つ つかぬまま 紙の吹雪の ふりまかれたり
シヤンデリアノ アカリノヒトツ ツカヌママ カミノフブキノ フリマカレタリ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.165
【初出】 『彩』 1965.6 潮鳴り (5)


01355
高まりて 来る夜のうしほ 蛾のひらく ごとくに白き 扇が動く
タカマリテ クルヨノウシホ ガノヒラク ゴトクニシロキ オウギガウゴク

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.166
【初出】 『彩』 1965.6 潮鳴り (6)


01356
草はらの 露に濡れたる 足のまま 溺れてゐたし 花火の夜に
クサハラノ ツユニヌレタル アシノママ オボレテヰタシ ハナビノヨルニ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.166
【初出】 『彩』 1965.6 潮鳴り (7)


01357
そそのかす ごとき手なりき すきとほる 黒の手袋 脱ぐこともなく
ソソノカス ゴトキテナリキ スキトホル クロノテブクロ ヌグコトモナク

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.166
【初出】 『彩』 1965.6 潮鳴り (8)


01358
蝙蝠の 傾ぎつつ舞ふ 夢なりき 傷つけばなほ 飛ぶほかはなく
コウモリノ カシギツツマフ ユメナリキ キズツケバナホ トブホカハナク

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.167
【初出】 『彩』 1965.6 潮鳴り (12)


01359
なめらかに 這ふ夜の野火と 見てゐしが 遠景に人の 影すれちがふ
ナメラカニ ハフヨノノビト ミテヰシガ エンケイニヒトノ カゲスレチガフ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.167
【初出】 『彩』 1965.6 潮鳴り (13)


01360
坂道の 白々と続き ゐし記憶 暗がりし海の 色も忘れず
サカミチノ シロジロトツヅキ ヰシキオク クラガリシウミノ イロモワスレズ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.167
【初出】 『彩』 1965.6 潮鳴り (14)


01361
石膏の 鼻梁思ひ切り もりあげて 誰にも似ざる 像かきざまむ
セッコウノ ビリョウオモヒキリ モリアゲテ ダレニモニザル ゾウカキザマム

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.168
【初出】 『彩』 1965.6 潮鳴り (17)


01362
繃帯に にじむマシン油 まことわれは 悔い改むる こと少なきか
ホウタイニ ニジムマシンユ マコトワレハ クイアラタムル コトスクナキカ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.168
【初出】 『彩』 1965.6 潮鳴り (18)


01363
潮鳴りの 音を鎮めて 眠らむに 底知れぬ窪み などが見え来る
シオナリノ オトヲシズメテ ネムラムニ ソコシレヌクボミ ナドガミエクル

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.168
【初出】 『彩』 1965.6 潮鳴り (19)