さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

無数の耳

 
紫いろの        てのひらを       青胡桃の        胸板の         
迷ひ犬か        裸足にて        をりをりに       さまざまの       
 
 
 

01345
紫いろの 切手を貼れる 手紙来て 陥れむと するにあらずや
ムラサキイロノ キッテヲハレル テガミキテ オトシイレムト スルニアラズヤ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.162
【初出】 『彩』 1965.6 とばり (1)


01346
てのひらを くぼめて待てば 青空の 見えぬ傷より 花こぼれ来る
テノヒラヲ クボメテマテバ アオゾラノ ミエヌキズヨリ ハナコボレクル

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.162
【初出】 『彩』 1965.6 とばり (2)


01347
青胡桃の 匂ふひとつを 手にのせて 囚はれやすき こころも寂し
アオクルミノ ニオフヒトツヲ テニノセテ トラハレヤスキ ココロモサビシ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.163
【初出】 『彩』 1965.6 とばり (4)


01348
胸板の 厚き奴隷も 息絶えて 画廊出づれば 夜の人通り
ムナイタノ アツキドレイモ イキタエテ ガロウイヅレバ ヨノヒトドオリ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.163
【初出】 『彩』 1965.6 とばり (5)


01349
迷ひ犬か 何かのやうに ゐるわれか 人は行き交ふ 鎖を曳きて
マヨヒイヌカ ナニカノヤウニ ヰルワレカ ヒトハユキカフ クサリヲヒキテ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.163
【初出】 『彩』 1965.6 とばり (6)


01350
裸足にて 歩む痛みと 思ふ夜も 尖塔は十字の ネオンをともす
ハダシニテ アユムイタミト オモフヨモ セントウハジュウジノ ネオンヲトモス

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.164
【初出】 『彩』 1965.6 とばり (7)


01351
をりをりに 黒光りして 現るる いつの日かわれを 吊るすべき鈎
ヲリヲリニ クロビカリシテ アラハルル イツノヒカワレヲ ツルスベキカギ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.164
【初出】 『彩』 1965.6 とばり (8)


01352
さまざまの 帳がありて めぐりあはぬ 一生と思ひ ながく眠らず
サマザマノ トバリガアリテ メグリアハヌ ヒトヨトオモヒ ナガクネムラズ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.164
【初出】 『彩』 1965.6 とばり (9)