さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

無数の耳

 
野火に追はれし     音立てて        枯れ芦の        いつの日に       
とめどなく       うらがへり       象なき         一摑みの        
 
 
 

01321
野火に追はれし たかぶりもいつか 醒めゆきて 踏みしだかれし 十薬匂ふ
ノビニオハレシ タカブリモイツカ サメユキテ フミシダカレシ ドクダミニオフ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.153
【初出】 『彩』 1965.6 かたちなき岩 (1)


01322
音立てて 土にくづほれ たき日なり みだらに紅葉 して立つ木あり
オトタテテ ツチニクヅホレ タキヒナリ ミダラニモミヂ シテタツキアリ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.153
【初出】 『彩』 1965.6 かたちなき岩 (2)


01323
枯れ芦の 上を近づく 風の音 沼のおもては いまだしづけし
カレアシノ ウエヲチカヅク カゼノオト ヌマノオモテハ イマダシヅケシ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.154
【初出】 『彩』 1965.6 水明かり (5)


01324
いつの日に 入れしままなる 指貫か 雨衣の かくしより出づ
イツノヒニ イレシママナル ユビヌキカ レインコートノ カクシヨリイヅ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.154
【初出】 『形成』 1964.6 「無題」 (4)


01325
とめどなく 流るる涙 わが膝に まつはる犬は 耳やはらかし
トメドナク ナガルルナミダ ワガヒザニ マツハルイヌハ ミミヤハラカシ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.154
【初出】 『彩』 1965.6 かたちなき岩 (5)


01326
うらがへり また裏返る 海月のむれ 藻となりてわれの 漂ひゆけば
ウラガヘリ マタウラガエル クラゲノムレ モトナリテワレノ タダヨヒユケバ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.155
【初出】 『彩』 1965.6 かたちなき岩 (7)


01327
象なき 岩が夜毎に 現れて 水のゆくへを 塞がむとする
カタチナキ イワガヨゴトニ アラワレテ ミズノユクヘヲ フサガムトスル

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.155
【初出】 『彩』 1965.6 かたちなき岩 (8)


01328
一摑みの 籾あらば生命 ひらかれむ 目ざめに思ふ こともつたなし
ヒトツカミノ モミアラバイノチ ヒラカレム メザメニオモフ コトモツタナシ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.155
【初出】 『彩』 1965.6 かたちなき岩 (9)