さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

無数の耳

 
ふり仰ぐ        仕上らぬ        執拗に         石などに        
移り来し        紅絹縫へば       閉ぢし目に       地に届く        
合歓の木の       縁の欠けし       身の振りに       
 
 
 

01299
ふり仰ぐ 枯れ木に大き 目があけば 見抜かれてゐる 業あるごとし
フリアオグ カレキニオオキ メガアケバ ミヌカレテヰル ゴフアルゴトシ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.145
【初出】 『短歌研究』 1965.1 見知らぬ街 (12)


01300
仕上らぬ コート幾日も 壁に吊り 怠りを知らぬ 齢も過ぎぬ
シアガラヌ コートイクヒモ カベニツリ オコタリヲシラヌ ヨハヒモスギヌ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.145
【初出】 『短歌研究』 1965.1 見知らぬ街 (14)


01301
執拗に 片目盲ひし 農婦など 描きゐたりし それより訪はず
シツヨウニ カタメメシヒシ ノウフナド エガキヰタリシ ソレヨリトハズ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.146
【初出】 『短歌研究』 1965.1 見知らぬ街 (10)


01302
石などに 似て来しわれと 思はねど 石も呻くと 聞けば歎かゆ
イシナドニ ニテコシワレト オモハネド イシモウメクト キケバナゲカユ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.146
【初出】 『短歌研究』 1965.1 見知らぬ街 (16)


01303
移り来し 日より再び 消し炭を 壺に貯めつつ 炊ぐ妹
ウツリコシ ヒヨリフタタビ ケシズミヲ ツボニタメツツ カシグイモウト

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.146
【初出】 『短歌研究』 1965.1 見知らぬ街 (22)


01304
紅絹縫へば 痛む指先 折れ易き 針のことなど かなしみ尽きず
モミヌヘバ イタムユビサキ オレヤスキ ハリノコトナド カナシミツキズ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.147
【初出】 『短歌研究』 1965.1 見知らぬ街 (23)


01305
閉ぢし目に 木々の高さを 測りゐつ 風立ち来れば 共にゆれつつ
トヂシメニ キギノタカサヲ ハカリヰツ カゼタチクレバ トモニユレツツ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.147
【初出】 『短歌研究』 1965.1 見知らぬ街 (9)


01306
地に届く ばかりの氷柱 冴ゆるとふ 帰り住めとは 言ひ来ずなりぬ
チニトドク バカリノツララ サユルトフ カエリスメトハ イヒコズナリヌ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.147
【初出】 『短歌研究』 1965.1 見知らぬ街 (25)


01307
合歓の木の 小さき種子を 送り来ぬ 相見にし花 忘れずにゐて
ネムノキノ チサキシュシヲ オクリコヌ アイミニシハナ ワスレズニヰテ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.148
【初出】 『短歌研究』 1965.1 見知らぬ街 (15)


01308
縁の欠けし 皿のコキール 食み余し 乗りつぎゆかむ 枯れ野のバスに
フチノカケシ サラノコキール ハミアマシ ノリツギユカム カレノノバスニ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.148
【初出】 『短歌研究』 1965.1 見知らぬ街 (28)


01309
身の振りに 迷ふならねど 帰り来て たたむシヨールは 毛の匂ひ持つ
ミノフリニ マヨフナラネド カエリキテ タタムシヨールハ ケノニオヒモツ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.148
【初出】 『短歌研究』 1965.1 見知らぬ街 (21)