さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

無数の耳

 
くれぐれの       鷺一羽         宵々に         まなうらに       
落ち柚子の       手袋を         鮮血を         伐木の         
 
 
 

01267
くれぐれの 野を追はれゆく 黄牛の 未だをさなき 角持ちゐたり
クレグレノ ノヲオハレユク アメウシノ イマダヲサナキ ツノモチヰタリ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.133
【初出】 『短歌研究』 1964.5 季冬日々 (23)


01268
鷺一羽 蠟の白さに 立てる見つ 光とぼしき 河原をゆきて
サギイチワ ロウノシロサニ タテルミツ ヒカリトボシキ カワラヲユキテ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.133
【初出】 『短歌研究』 1964.5 季冬日々 (24)


01269
宵々に 灯をちりばめむ わが窓を 起点にのばす 枯れ原の道
ヨヒヨヒニ ヒヲチリバメム ワガマドヲ キテンニノバス カレハラノミチ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.134
【初出】 『短歌研究』 1964.5 季冬日々 (25)


01270
まなうらに 白々と立つ 噴水も 病む目のゆゑと して眠るなり
マナウラニ シロジロトタツ フンスイモ ヤムメノユヱト シテネムルナリ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.134
【初出】 『短歌研究』 1964.5 季冬日々 (26)


01271
落ち柚子の 腐つ香土に 漂へば 夜の更けてまた 雨降り出でむ
オチユズノ クダツコウドニ タダヨヘバ ヨノフケテマタ アメフリイデム

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.134
【初出】 『短歌研究』 1964.5 季冬日々 (27)


01272
手袋を レースに替へて 出づる朝 一夜に闌けし 椿を踏みて
テブクロヲ レースニカヘテ イヅルアサ ヒトヨニタケシ ツバキヲフミテ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.135
【初出】 『短歌研究』 1964.5 季冬日々 (28)


01273
鮮血を 噴くあたらしき 傷を欲り さすらひゆけば 路地深き街
センケツヲ フクアタラシキ キズヲホリ サスラヒユケバ ロジフカキマチ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.135
【初出】 『短歌研究』 1964.5 季冬日々 (29)


01274
伐木の あとあらはなる 夕焼けの 空ありわれは 何処へ発たむ
バツボクノ アトアラハナル ユウヤケノ ソラアリワレハ イヅクヘタタム

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.135
【初出】 『短歌研究』 1964.5 季冬日々 (30)