さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

無数の耳

 
傘二つ         一枚の         鉄骨の         底ひより        
遠景に         長雨の         枕木の         いつの間に       
荷台より        背伸びして       
 
 
 

01204
傘二つ ひろげて待てば 妹は ピアノに鍵を かけて出で来ぬ
カサフタツ ヒロゲテマテバ イモウトハ ピアノニカギヲ カケテイデコヌ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.108
【初出】 『短歌』 1963.7 雨季のうた (28)


01205
一枚の てのひらをもて 蔽はむに 溢れて思ふ ことも少なし
イチマイノ テノヒラヲモテ オオハムニ アフレテオモフ コトモスクナシ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.109
【初出】 『短歌』 1963.7 雨季のうた (17)


01206
鉄骨の 階ひびきあふ 踊り場に 海見しごとき くるめきに会ふ
テッコツノ カイヒビキアフ オドリバニ ウミミシゴトキ クルメキニアフ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.109
【初出】 『短歌』 1963.7 雨季のうた (21)


01207
底ひより よみがへる鐘の 声を待ち 夜々に弾く沈める 寺のバラード
ソコヒヨリ ヨミガヘルカネノ コエヲマチ ヨヨニヒクシズメル テラノバラード

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.109
【初出】 『短歌』 1963.7 雨季のうた (19)


01208
遠景に 触覚のごとき クレーン見え 崩れし石の 坂下りゆく
エンケイニ ショッカクノゴトキ クレーンミエ クズレシイシノ サカクダリユク

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.110
【初出】 『短歌』 1963.7 雨季のうた (29)


01209
長雨の 水を溜めゐむ 濠のあと ほろびし墳の 木々青みたり
ナガアメノ ミズヲタメヰム ホリノアト ホロビシツカノ キギアオミタリ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.110
【初出】 『短歌』 1963.7 雨季のうた (23)


01210
枕木の 間隔を読む ごとく来て 蛇を剥きゐる 少年に会ふ
マクラギノ カンカクヲヨム ゴトクキテ ヘビヲムキヰル ショウネンニアフ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.110
【初出】 『短歌』 1963.7 雨季のうた (24)


01211
いつの間に 杉菜長けゐる 水のほとり わが沈めたる 斧も還るや
イツノマニ スギナタケヰル ミズノホトリ ワガシズメタル オノモカエルヤ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.111
【初出】 『短歌』 1963.7 雨季のうた (11)


01212
荷台より 足を垂らして 児が乗れり きしみつつゆく 野の牛ぐるま
ニダイヨリ アシヲタラシテ コガノレリ キシミツツユク ノノウシグルマ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.111
【初出】 『短歌』 1963.7 雨季のうた (9)


01213
背伸びして 妹の薔薇を 覗くさま ガラス透かして 遠景に似つ
セノビシテ イモウトノバラヲ ノゾクサマ ガラススカシテ エンケイニニツ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.111
【初出】 『短歌』 1963.7 雨季のうた (22)