さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

無数の耳

 
角砂糖         ミノルカの       皺ぶかき        蔓草に         
咲きたけし       年々に         どの巣箱に       濡らし来し       
仕事好きと       錐揉みて        去年の落ち葉      ゆきずりに       
蹄鉄を         飲み余す        
 
 
 

01165
角砂糖 沈みゆくまの ゆとりにて 桐の花咲く 野を恋ひゐたり
カクザトウ シズミユクマノ ユトリニテ キリノハナサク ノヲコヒヰタリ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.94
【初出】 『形成』 1963.7 雨衣 (24)


01166
ミノルカの 千羽飼ひゐし 日を聞けど 野はきららかに 穂絮とびかふ
ミノルカノ センバカヒヰシ ヒヲキケド ノハキララカニ ホワタトビカフ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.94
【初出】 『形成』 1963.7 雨衣 (15)


01167
皺ぶかき 顔に戻れり 厩舎に 馬ををさめて 来し調教師
シワブカクキ カオニモドレリ ウマノヤニ ウマヲヲサメテ コシチョウキョウシ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.95
【初出】 『形成』 1963.7 雨衣 (26)


01168
蔓草に からまれ眠る なきがらの われを谷間に 置きて戻りつ
ツルクサニ カラマレネムル ナキガラノ ワレヲタニマニ オキテモドリツ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.95
【初出】 『形成』 1963.7 雨衣 (16)


01169
咲きたけし 白藤の灯に 揺れて見ゆ こはれし鍵に 釘を挿しおく
サキタケシ シラフジノヒニ ユレテミユ コハレシカギニ クギヲサシオク

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.95
【初出】 『形成』 1963.7 雨衣 (19)


01170
年々に 針の目粗く なりゆくと 危ふく裾を 綴ぢ終りたり
ネンネンニ ハリノメアラク ナリユクト アヤフクスソヲ トヂオワリタリ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.96
【初出】 『形成』 1963.7 雨衣 (20)


01171
どの巣箱に 棲むとも知れぬ 小緩鶏の をりをりに来て 芝生を渡る
ドノスバコニ スムトモシレヌ コジュケイノ ヲリヲリニキテ シバフヲワタル

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.96
【初出】 『形成』 1963.7 雨衣 (30)


01172
濡らし来し コート吊りつつ また思ふ 肩冷えてバスを 待ちし夜ありき
ヌラシコシ コートツリツツ マタオモフ カタヒエテバスヲ マチシヨアリキ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.96
【初出】 『形成』 1963.7 雨衣 (29)


01173
仕事好きと 見做さるる身を 悔やまねど 銀線草の 花も過ぎゐる
シゴトズキト ミナサルルミヲ クヤマネド ヒトリシヅカノ ハナモスギヰル

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.97
【初出】 『形成』 1963.7 雨衣 (25)


01174
錐揉みて 分厚き帳簿 綴ぢゆけり 立ち直りゐる 午後の心に
キリモミテ ブアツキチョウボ トヂユケリ タチナオリヰル ゴゴノココロニ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.97
【初出】 『形成』 1963.10 日常抄 (1)


01175
去年の落ち葉 今年の落ち葉 積み溜めて そよぐともなく 濡るる竹群
コゾノオチバ コトシノオチバ ツミタメテ ソヨグトモナク ヌルルタカムラ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.97
【初出】 『形成』 1963.10 日常抄 (2)


01176
ゆきずりに 交はす言葉も 潤ほふと 花終へし木瓜の 垣をめぐりつ
ユキズリニ カハスコトバモ ウルホフト ハナオヘシボケノ カキヲメグリツ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.98
【初出】 『形成』 1964.6 「無題」 (1)


01177
蹄鉄を 打ち替へてなほも 追ふ騎士に 追ひつめられつつ 見てゐしテレビ
テイテツヲ ウチカヘテナホモ オフキシニ オヒツメラレツツ ミテヰシテレビ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.98
【初出】 『形成』 1962.5 春を呼ぶ (5)


01178
飲み余す ジンの重たく 輝けば 浪費遂げ来し 年月ながし
ノミアマス ジンノオモタク カガヤケバ ロウヒトゲコシ ネンゲツナガシ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.98
【初出】 『形成』 1963.6 残冬抄 (3)