さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

無数の耳

 
宿り木の        亡き声に        スキー服の       とりどりの       
古びたる        風触の         歩き疲れて       年々に         
 
 
 

01146
宿り木の 青みわたれる 森を行く つめたき陶の 卵を持ちて
ヤドリギノ アオミワタレル モリヲユク ツメタキトウノ タマゴヲモチテ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.87
【初出】 『短歌研究』 1963.5 沼の遠景 (18)


01147
亡き声に かどはかされて 訪ひし家 輝く馬具を 今も掛け置く
ナキコエニ カドハカサレテ トヒシイエ カガヤクバグヲ イマモカケオク

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.87
【初出】 『短歌研究』 1963.5 沼の遠景 (14)


01148
スキー服の 少女もいつか 歩み去り 造花ひしめく 今朝の飾窓
スキーフクノ オトメモイツカ アユミサリ ゾウカヒシメク ケサノウインドウ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.88
【初出】 『短歌研究』 1963.5 沼の遠景 (27)


01149
とりどりの 腰紐などを 垂れて売る 店先過ぎて 心騒がし
トリドリノ コシヒモナドヲ タレテウル ミセサキスギテ ココロサワガシ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.88
【初出】 『短歌研究』 1963.5 沼の遠景 (28)


01150
古びたる 黒のコートよ かの日々も かなしみ深く 坂を下りき
フルビタル クロノコートヨ カノヒビモ カナシミフカク サカヲクダリキ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.88
【初出】 『形成』 1963.10 日常抄 (5)


01151
風触の 石をかきわけ 萌え出でて すでにこまかき 葉をなすパセリ
フウショクノ イシヲカキワケ モエイデテ スデニコマカキ ハヲナスパセリ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.89
【初出】 『短歌研究』 1963.5 沼の遠景 (23)


01152
歩き疲れて 土間に卵を 生み終へし 鶏もいつか 視野を去りゆく
アルキツカレテ ドマニタマゴヲ ウミオヘシ ニワトリモイツカ シヤヲサリユク

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.89
【初出】 『短歌研究』 1963.5 沼の遠景 (19)


01153
年々に 聴きなれし竹の 落ち葉なれ 雨かと醒めし 妹が問ふ
ネンネンニ キキナレシタケノ オチバナレ アメカトサメシ イモウトガトフ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.89
【初出】 『短歌研究』 1963.5 沼の遠景 (24)