さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

無数の耳

 
呪縛解くる       手に乗れる       ヒヤシンスの      石膏の         
エンジンの       何を買ふ        見切りの品       白鳥の         
 
 
 

01130
呪縛解くる やうに朱の色 褪せてゆく 漂白瓶の 中のアマリリス
ジュバクトクル ヤウニシュノイロ アセテユク ヒョウハクビンノ ナカノアマリリス

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.80
【初出】 『形成』 1962.4 街上抄 (1)


01131
手に乗れる 文鳥は脚 あたたかく マカロニの皿 ついばみやまず
テニノレル ブンチョウハアシ アタタカク マカロニノサラ ツイバミヤマズ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.80
【初出】 『形成』 1963.6 残冬抄 (4)


01132
ヒヤシンスの 株殖えて咲く やさしさも 予後の歩みを 遠くいざなふ
ヒヤシンスノ カブフエテサク ヤサシサモ ヨゴノアユミヲ トオクイザナフ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.81
【初出】 『形成』 1962.7 移る日々 (2)


01133
石膏の 小さきヴイナスを 贈りしが 踏み砕かれて 遠き過去あり
セッコウノ チサキヴイナスヲ オクリシガ フミクダカレテ トオキカコアリ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.81
【初出】 『形成』 1962.7 移る日々 (3)


01134
エンジンの 音せぬ車 騒がしき 車さまざまに われを過ぎゆく
エンジンノ オトセヌクルマ サワガシキ クルマサマザマニ ワレヲスギユク

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.81
【初出】 『形成』 1962.7 移る日々 (4)


01135
何を買ふ 列とも知れず 彎曲し 尾は駅前の 人波に消ゆ
ナニヲカフ レツトモシレズ ワンキョクシ オハエキマエノ ヒトナミニキユ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.82
【初出】 『形成』 1962.4 街上抄 (5)


01136
見切りの品 告ぐる散らしを 渡されつ 無欲よそほひ 歩める時に
ミキリノシナ ツグルチラシヲ ワタサレツ ムヨクヨソホヒ アユメルトキニ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.82
【初出】 『形成』 1962.4 街上抄 (6)


01137
白鳥の 北へ飛び立つ 羽音など 聞かせて春を 呼ぶ夜のラヂオ
ハクチョウノ キタヘトビタツ ハオトナド キカセテハルヲ ヨブヨノラヂオ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.82
【初出】 『形成』 1962.5 春を呼ぶ (8)