さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

無数の耳

 
何遂げむ        手袋の         電光ニュースの     雪山の         
罪障の         水滴を         温床の         中傷の         
 
 
 

01051
何遂げむ 思ひともなし 噴水と 呼吸合ふまで 立ちつくしゐて
ナニトゲム オモヒトモナシ フンスイト コキュウアフマデ タチツクシヰテ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.51


01052
手袋の ままダイヤルを 廻しつつ 不在を願ふ 貌まぎれなし
テブクロノ ママダイヤルヲ マワシツツ フザイヲネガフ カホマギレナシ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.51


01053
電光ニュースの とぎれし字句を つなぐ恣意 よみがへり来よ かの同志
デンコウニュースノ トギレシジクヲ ツナグシイ ヨミガヘリコヨ カノタワリシチ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.52


01054
雪山の 遺品をかこむ 輪の中に 確かめがたき 死を恋ひゐたり
ユキヤマノ イヒンヲカコム ワノナカニ タシカメガタキ シヲコヒヰタリ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.52


01055
罪障の ごとくときめき 飾窓に 血玉と謂へる 珊瑚珠ありき
ザイショウノ ゴトクトキメキ ウインドウニ チダマトイヘル サンゴシュアリキ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.52


01056
水滴を 垂れつつ尖り ゆく氷柱 暗示にかかる ごとく見てゐつ
スイテキヲ タレツツトガリ ユクツララ アンジニカカル ゴトクミテヰツ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.53
【初出】 『短歌研究』 1972.8 無数の耳 (23)


01057
温床の パイロツトランプ 吹き消して 来し悔いをふと 点すに似たる
オンショウノ パイロットランプ フキケシテ コシクイヲフト トモスニニタル

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.53
【初出】 『短歌研究』 1972.8 無数の耳 (10)


01058
中傷の 文字読みしあと 硝子戸に 映れるわれは ゆらゆらと起つ
チュウショウノ モジヨミシアト ガラスドニ ウツレルワレハ ユラユラトタツ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.53
【初出】 『短歌研究』 1972.8 無数の耳 (27)