さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

無数の耳

 
雨のなかに       ハイヤーを       対きあひて       漂鳥の         
印章を         タール煮る       油菜は         住みがたき       
 
 
 

01002
雨のなかに 赭く錆びゆく 朴の花 昨夜の夢さへ われをあざむく
アメノナカニ アカクサビユク ホウノハナ ヨベノユメサヘ ワレヲアザムク

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.32
【初出】 『新日記白樺』 1963.1 三叉路 (1)


01003
ハイヤーを 洗ふホースが くねりゐて 予感するどし 朝の駅前
ハイヤーヲ アラフホースガ クネリヰテ ヨカンスルドシ アサノエキマエ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.32
【初出】 『新日記白樺』 1963.1 三叉路 (2)


01004
対きあひて プルニエの皿 あけしのみ 掠むるやうに バスは発ちゆく
ムキアヒテ プルニエノサラ アケシノミ カスムルヤウニ バスハタチユク

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.33
【初出】 『新日記白樺』 1963.1 三叉路 (3)


01005
漂鳥の 自在を阻む 何あらむ 或る日は重く 地にゐる鳩ら
ヒョウチョウノ ジザイヲハバム ナニアラム アルヒハオモク チニヰルハトラ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.33
【初出】 『新日記白樺』 1963.1 三叉路 (4)


01006
印章を あつらへに入りて 小暗きに 癖つよき文字 カードに記す
インシヨウヲ アツラヘニイリテ オグラキニ クセツヨキモジ カードニシルス

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.33
【初出】 『新日記白樺』 1963.1 三叉路 (5)


01007
タール煮る かたはら過ぎて 襟暑し 何時訪ひ来ても 騒ける町
タールニル カタハラスギテ エリアツシ イツトヒキテモ ザワツケルマチ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.34
【初出】 『新日記白樺』 1963.1 三叉路 (6)


01008
油菜は 青き実莢を かかげゐつ 埋立てを終へて 久しき空き地
アブラナハ アオキミザヤヲ カカゲヰツ ウメタテヲオヘテ ヒサシキアキチ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.34
【初出】 『形成』 1961.9 田園抄 (2)


01009
住みがたき 町と思ふに 三叉路は 風を呼びつつ 風鈴売らる
スミガタキ マチトオモフニ サンサロハ カゼヲヨビツツ フウリンウラル

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.34