さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

無数の耳

 
船火事の        わが岸を        朱を塗りて       三椏は         
音量を         受け身にて       新しき         鷺草の         
 
 
 

00986
船火事の 遠景を映す 夜のテレビ 巻き添へをくひし 寂しさにゐて
フナカジノ エンケイヲウツス ヨノテレビ マキゾヘヲクヒシ サビシサニヰテ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.26
【初出】 『形成』 1961.3 冬夜抄 (1)


00987
わが岸を しきりに抉る 流れあり 夜更けて風の 音を伴ふ
ワガキシヲ シキリニヱグル ナガレアリ ヨフケテカゼノ オトヲトモナフ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.26


00988
朱を塗りて 仕上げしグラフ みづからの 信じ得ぬ日も 人は信ぜむ
シュヲヌリテ シアゲシグラフ ミヅカラノ シンジエヌヒモ ヒトハシンゼム

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.27


00989
三椏は 毛深き花と 触れて見つ 夢のつづきの しぐさのごとく
ミツマタハ ケブカキハナト フレテミツ ユメノツヅキノ シグサノゴトク

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.27


00990
音量を 下げつつ待つに 鼓手の 身振り映して 久しきテレビ
オンリョウヲ サゲツツマツニ ドラマーノ ミブリウツシテ ヒサシキテレビ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.27


00991
受け身にて 生きゐるとのみ 思はねど わがめぐり不意に 空気さわだつ
ウケミニテ イキヰルトノミ オモハネド ワガメグリフイニ クウキサワダツ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.28
【初出】 『形成』 1961.11 新秋抄 (3)


00992
新しき 銃と霰弾 買ひ込みて 山に帰りし その後を知らず
アタラシキ ジュウトサンダン カヒコミテ ヤマニカエリシ ソノゴヲシラズ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.28


00993
鷺草の 花の無数が はばたくと 夕日の河原 さわだちやすし
サギソウノ ハナノムスウガ ハバタクト ユウヒノカワラ サワダチヤスシ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.28