さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

無数の耳

 
光りつつ        確かめ得し       賭けて待つ       人ごみを        
なほざりに       英文の         亡き母の        信じたき        
触発を         柱像の         山脈に         
 
 
 

00975
光りつつ 降る淡雪よ 夜の橋を 幾つ渡りて 行かば逢ひ得む
ヒカリツツ フルアワユキヨ ヨノハシヲ イクツワタリテ ユカバアヒエム

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.22
【初出】 『形成』 1961.3 冬夜抄 (2)


00976
確かめ得し 記憶の一つ はかなくて 重き字引きを 棚に戻しぬ
タシカメエシ キオクノヒトツ ハカナクテ オモキジビキヲ タナニモドシヌ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.22
【初出】 『形成』 1961.11 新秋抄 (4)


00977
賭けて待つ こと危ふきか 束の間に ロデオの騎手は 振り落されつ
カケテマツ コトアヤフキカ ツカノマニ ロデオノキシュハ フリオトサレツ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.23
【初出】 『形成』 1961.11 新秋抄 (5)


00978
人ごみを かきわけし時 渡されて 割り符のごとき 紙きれを持つ
ヒトゴミヲ カキワケシトキ ワタサレテ ワリフノゴトキ カミキレヲモツ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.23


00979
なほざりに 告げ来し語彙の 疼くまま 塩打ちて置く 鯖の半身に
ナホザリニ ツゲコシゴイノ ウヅクママ シオウチテオク サバノハンミニ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.23
【初出】 『形成』 1961.1 初冬抄 (2)


00980
英文の 手紙など呉れて 寂しきか 夜のへだたりに 雪降りしきる
エイブンノ テガミナドクレテ サビシキカ ヨノヘダタリニ ユキフリシキル

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.24
【初出】 『形成』 1961.1 初冬抄 (5)


00981
亡き母の 縫ひ残したる 裾を綴ぢ いつまで脆き こころと思ふ
ナキハハノ ヌヒノコシタル スソヲトヂ イツマデモロキ ココロトオモフ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.24
【初出】 『形成』 1961.1 初冬抄 (6)


00982
信じたき 人らの前に ひろげられ 詐術のごとき 折線グラフ
シンジタキ ヒトラノマエニ ヒロゲラレ サジュツノゴトキ オレセングラフ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.24
【初出】 『形成』 1961.4 路上抄 (5)


00983
触発を 怖れて噤みし 言葉あり 歩度ゆるめたる ことも知りつつ
ショクハツヲ オソレテツグミシ コトバアリ ホドユルメタル コトモシリツツ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.25
【初出】 『形成』 1961.4 路上抄 (1)


00984
柱像の 双手が支へ ゐし屋根の 重み夜更けて わが肩に来る
アトラントノ モロテガササヘ ヰシヤネノ オモミヨフケテ ワガカタニクル

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.25


00985
山脈に 雪ひだ蒼く かげるまで 待ちしことさへ 告げむすべなし
ヤマナミニ ユキヒダアオク カゲルマデ マチシコトサヘ ツゲムスベナシ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.25
【初出】 『形成』 1961.4 路上抄 (2)