さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

無数の耳

 
偽りを         奪魂の         反応を         遠近の         
ワイパーは       燃え殻の        温覚を         銅鑼にぶく       
病棟の         ハイヤーを       フレームを       
 
 
 

00964
偽りを 名乗る要など なきことの ふと寂しくて ロビーに待てり
イツワリヲ ナノルヨウナド ナキコトノ フトサビシクテ ロビーニマテリ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.17
【初出】 『短歌研究』 1960.11 無証の夜 (5)


00965
奪魂の 術などもわれは 持ちたきに 影近寄せて 街灯ともる
ダツコンノ スベナドモワレハ モチタキニ カゲチカヨセテ ガイトウトモル

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.17
【初出】 『短歌』 1960.12 西域の壺 (6)


00966
反応を 示すことなく 聴き終へて 立ち場互角と なりし時の間
ハンノウヲ シメスコトナク キキオヘテ タチバゴカクト ナリシトキノマ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.18
【初出】 『短歌』 1960.12 西域の壺 (16)


00967
遠近の 正しき絵にて 動き得ぬ 人間も牛の 群れも苦しき
エンキンノ タダシキエニテ ウゴキエヌ ニンゲンモウシノ ムレモクルシキ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.18
【初出】 『短歌研究』 1960.11 無証の夜 (4)


00968
ワイパーは 硝子擦りゐて おもむろに 見え来るわれの 入り込まむ隙
ワイパーハ ガラススリヰテ オモムロニ ミエクルワレノ イリコマムスキ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.18
【初出】 『短歌』 1960.12 西域の壺 (7)


00969
燃え殻の ごとき心と 思はねど 焚き火かこむ輪を 崩して去りぬ
モエガラノ ゴトキココロト オモハネド タキビカコムワヲ クズシテサリヌ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.19
【初出】 『形成』 1961.4 路上抄 (4)


00970
温覚を 失ひゆくと 思ふまで 待ちていかなる 夜の修羅を見む
オンカクヲ ウシナヒユクト オモフマデ マチテイカナル ヨノシュラヲミム

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.19
【初出】 『短歌』 1960.12 西域の壺 (26)


00971
銅鑼にぶく 鳴らし出でゆく 船があり 醒めて白夜の ごときしづもり
ドラニブク ナラシイデユク フネガアリ サメテビャクヤノ ゴトキシヅモリ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.19
【初出】 『形成』 1961.9 田園抄 (5)


00972
病棟の 略図書きやりて 別れしが わが名は如何に 告げられてゐむ
ビョウトウノ リャクズカキヤリテ ワカレシガ ワガナハイカニ ツゲラレテヰム

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.20
【初出】 『短歌研究』 1960.11 無証の夜 (8)


00973
ハイヤーを とめむと挙げし 腕にずり 腕環すでに 夜の冷え持つ
ハイヤーヲ トメムトアゲシ ウデニズリ ブレスレットスデニ ヨルノヒエモツ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.20
【初出】 『短歌研究』 1960.11 無証の夜 (2)


00974
フレームを 造る計画 持ちあへば 来たらむ冬に 幸待つごとし
フレームヲ ツクルケイカク モチアヘバ キタラムフユニ サチマツゴトシ

『無数の耳』(短歌研究社 1966) p.20
【初出】 『短歌』 1960.12 西域の壺 (30)