さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

不文の掟

 
桐の花         立ち直り        苛立てる        卓効を         
きりもなく       裏腹の         弱りたる        裂かれ来し       
 
 
 

00915
桐の花 咲く野となりて 携ふる 母亡きことを 互に言はず
キリノハナ サクノトナリテ タズサフル ハハナキコトヲ カタミニイハズ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.175
【初出】 『形成』 1960.6 矢車の空 (1)


00916
立ち直り ゆき得ぬわれと 思はねど しんしんと冴えて 黄の杜若
タチナオリ ユキエヌワレト オモハネド シンシントサエテ キノカキツバタ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.175
【初出】 『形成』 1960.6 矢車の空 (2)


00917
苛立てる さまに立ち来て 病める母を 寂しがらせし 夜を忘れ得ず
イラダテル サマニタチキテ ヤメルハハヲ サビシガラセシ ヨヲワスレエズ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.176
【初出】 『形成』 1960.6 矢車の空 (3)


00918
卓効を 信じて母は 嚥みゐしか 散薬の残り 袋ごと燃す
タクコウヲ シンジテハハハ ノミヰシカ サンヤクノノコリ フクロゴトモス

『不文の掟』(四季書房 1960) p.176
【初出】 『形成』 1960.10 香華 (5)


00919
きりもなく ほつれゆきしは 何の糸 醒めしうつつに 矢車が鳴る
キリモナク ホツレユキシハ ナンノイト サメシウツツニ ヤグルマガナル

『不文の掟』(四季書房 1960) p.176
【初出】 『形成』 1960.6 矢車の空 (7)


00920
裏腹の 心見抜かれ ゐしわれか ひとりとなりて 眼帯はづす
ウラハラノ ココロミヌカレ ヰシワレカ ヒトリトナリテ ガンタイハヅス

『不文の掟』(四季書房 1960) p.177


00921
弱りたる 視力と思ひ 立ちゐるに プラカードも友らも ぐんぐん近づく
ヨワリタル シリョクトオモヒ タチヰルニ プラカードモトモラモ グングンチカヅク

『不文の掟』(四季書房 1960) p.177
【初出】 『形成』 1959.1 初冬のころ (2)


00922
裂かれ来し コート繕ひ やりながら われになし得る ことも少なし
サカレコシ コートツクロヒ ヤリナガラ ワレニナシウル コトモスクナシ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.177