さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

不文の掟

 
みづからの       肩触れて        ネオンの天馬      ライターの       
踏みはづす       掌紋の         ウインドゥの      あらはなる       
 
 
 

00899
みづからの 吐きし言葉に 縛られむ 森ゆけば木々の 生傷匂ふ
ミヅカラノ ハキシコトバニ シバラレム モリユケバキギノ ナマキズニオフ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.168
【初出】 『形成』 1960.3 残冬抄 (3)


00900
肩触れて 揺られゆくとも 行く先の 違ふ切符を 別々に持つ
カタフレテ ユラレユクトモ ユクサキノ チガフキップヲ ベツベツニモツ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.168
【初出】 『形成』 1959.10 物語り (5)


00901
ネオンの天馬 仰ぎゆきつつ 病む母に 待たれゐる身を 紛はし得ず
ネオンノテンマ アオギユキツツ ヤムハハニ マタレヰルミヲ マギラハシエズ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.169
【初出】 『形成』 1960.3 残冬抄 (5)


00902
ライターの 火もてロープを 切れる見つ 錯落はまた きざさむとして
ライターノ ヒモテロープヲ キレルミツ サクラクハマタ キザサムトシテ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.169


00903
踏みはづす 夢ばかり見て 来しわれか 霧のなかより 繩梯子垂る
フミハヅス ユメバカリミテ コシワレカ キリノナカヨリ ナハバシゴタル

『不文の掟』(四季書房 1960) p.169
【初出】 『形成』 1959.10 物語り (1)


00904
掌紋の 上昇線を 指し呉れし 卜者のこゑも 須臾にして消ゆ
ショウモンノ ジョウショウセンヲ サシクレシ ボクシャノコヱモ シュユニシテキユ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.170
【初出】 『形成』 1959.12 秋深む日々 (2)


00905
ウインドゥの ネクタイと影と 入り乱れ 交はす言葉の 齟齬のみ開く
ウインドゥノ ネクタイトカゲト イリミダレ カハスコトバノ ソゴノミヒラク

『不文の掟』(四季書房 1960) p.170
【初出】 『形成』 1960.6 矢車の空 (4)


00906
あらはなる 寓意をうとみ 帰り来て 帯解きたたむ 膝冷えながら
アラハナル グウイヲウトミ カエリキテ オビトキタタム ヒザヒエナガラ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.170
【初出】 『形成』 1957.5 風塵 (7)