さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

不文の掟

 
手懸りの        銭苔の         銅貨投げて       先立てる        
草藤の         同じ道を        なまぬるき       黒ずみし        
旅先の         待たれゐむ       同じバスに       
 
 
 

00864
手懸りの なくて歩むに いりくめる 道のいづくにも 木犀匂ふ
テガカリノ ナクテアユムニ イリクメル ミチノイヅクニモ モクセイニオフ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.155
【初出】 『短歌』 1959.11 夜色 (11)


00865
銭苔の 貼りつける土 踏みゆきて 先蹤を越えむ 歩みに遠し
ゼニゴケノ ハリツケルツチ フミユキテ センショウヲコエム アユミニトオシ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.155
【初出】 『短歌』 1959.11 夜色 (12)


00866
銅貨投げて 愛を占ふとふ ローマの泉 幾夜の夢に 光りてやまず
ドウカナゲテ アイヲウラナフトフ ローマノイズミ イクヨノユメニ ヒカリテヤマズ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.156
【初出】 『形成』 1956.3 冬草 (10)


00867
先立てる 背後読みつつ 蹤きゆくと 朝より鈍り やすき心ぞ
サキダテル ソビラヨミツツ ツキユクト アサヨリナマリ ヤスキココロゾ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.156
【初出】 『形成』 1959.11 秋近く (5)


00868
草藤の 花に残れる 夕の雨 告げたき語彙も 日々に移ろふ
クサフヂノ ハナニノコレル ユウノアメ ツゲタキゴイモ ヒビニウツロフ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.156
【初出】 『短歌』 1959.11 夜色 (14)


00869
同じ道を 通ふほかなき 朝夕に 藍深めゆく 常山木の実あり
オナジミチヲ カヨフホカナキ アサユウニ アイフカメユク クサギノミアリ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.157


00870
なまぬるき われを詰れる 妹の 出でゆきて仔犬に 何か問ひゐる
ナマヌルキ ワレヲナジレル イモウトノ イデユキテコイヌニ ナニカトヒヰル

『不文の掟』(四季書房 1960) p.157


00871
黒ずみし バナナ積みあげ 売れる見つ 奇禍待つごとき 夜の街角
クロズミシ バナナツミアゲ ウレルミツ キカマツゴトキ ヨルノマチカド

『不文の掟』(四季書房 1960) p.157


00872
旅先の 夜にゐるごとき 風の音 はづせし耳環 机に置きて
タビサキノ ヨニヰルゴトキ カゼノオト ハヅセシミミワ ツクエニオキテ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.158
【初出】 『短歌』 1959.11 夜色 (13)


00873
待たれゐむ 手紙なれども 萩の花 咲きたりとのみ 書きて封閉づ
マタレヰム テガミナレドモ ハギノハナ サキタリトノミ カキテフウトヅ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.158
【初出】 『形成』 1956.10 ものの音 (4)


00874
同じバスに 乗り合ふのみの 日々過ぎて 今朝は静かに 霧降る広場
オナジバスニ ノリアフノミノ ヒビスギテ ケサハシズカニ キリフルヒロバ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.158
【初出】 『短歌』 1959.11 夜色 (15)