さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

不文の掟

 
片空の         錆び釘を        落ちのびし       針山に         
しづくして       へだたりを       マジョリカの      身を逼むる       
 
 
 

00856
片空の 虹もうすれて 凪ぎ深し まつはる犬を 枯れ木につなぐ
カタソラノ ニジモウスレテ ナギフカシ マツハルイヌヲ カレキニツナグ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.152
【初出】 『短歌』 1960.3 冬の言葉 (27)


00857
錆び釘を 拾ひて土に 書きし文字 落ち葉の下に 幾日保たむ
サビクギヲ ヒロヒテツチニ カキシモジ オチバノシタニ イクヒタモタム

『不文の掟』(四季書房 1960) p.152
【初出】 『短歌』 1960.3 冬の言葉 (2)


00858
落ちのびし 思ひに歩む 霧のなか 野飼ひの馬の 影ら漂ふ
オチノビシ オモヒニアユム キリノナカ ノガヒノウマノ カゲラタダヨフ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.153
【初出】 『形成』 1960.1 霜月抄 (1)


00859
針山に もつれゐし糸 ほぐしゐて きれぎれに戻り くる記憶あり
ハリヤマニ モツレヰシイト ホグシヰテ キレギレニモドリ クルキオクアリ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.153
【初出】 『短歌』 1960.3 冬の言葉 (5)


00860
しづくして ゐしアカンサス 鎮まれば 理詰めに言へる こともはかなし
シヅクシテ ヰシアカンサス シズマレバ リズメニイヘル コトモハカナシ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.153
【初出】 『短歌』 1960.3 冬の言葉 (7)


00861
へだたりを 確かめ合へば 足るごとく ドア押して出づ 夜霧の街に
ヘダタリヲ タシカメアヘバ タルゴトク ドアオシテイヅ ヨギリノマチニ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.154
【初出】 『短歌』 1960.3 冬の言葉 (8)


00862
マジョリカの 壼伏せ置きて 久しきに シレーヌのこゑも 蘇り来ず
マジョリカノ ツボフセオキテ ヒサシキニ シレーヌノコヱモ ヨミガエリコズ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.154
【初出】 『短歌』 1960.3 冬の言葉 (10)


00863
身を逼むる 不文の掟 思ふ夜も ミモザがこぼす 黄なる花びら
ミヲセムル フブンノオキテ オモフヨモ ミモザガコボス キナルハナビラ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.154
【初出】 『形成』 1960.1 霜月抄 (2)