さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

不文の掟

 
事務室の        日給を         呼び交はし       ニコチンの       
筋書きの        萌え早き        蕩揺を         詰る手紙        
何つなぎ        妹の          朝靄の         
 
 
 

00707
事務室の 窓に葉蘭の 鉢を置き 異動期まへの しづけき幾日
ジムシツノ マドニハランノ ハチヲオキ イドウキマヘノ シヅケキイクヒ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.95
【初出】 『形成』 1959.3 季冬のころ (7)


00708
日給を 取るやうになりて 明るき少年 自転車借りに 来て話しかく
ニッキュウヲ トルヤウニナリテ アカルキショウネン ジテンシャカリニ キテハナシカク

『不文の掟』(四季書房 1960) p.95
【初出】 『形成』 1956.1 湖心 (4)


00709
呼び交はし 夜の街に出づ 結論を 明日に持ち越す こともたのしく
ヨビカハシ ヨノマチニイヅ ケツロンヲ アスニモチコス コトモタノシク

『不文の掟』(四季書房 1960) p.96
【初出】 『形成』 1959.3 季冬のころ (5)


00710
ニコチンの 害など説きて さりげなき 人より奪ひ たき言葉あり
ニコチンノ ガイナドトキテ サリゲナキ ヒトヨリウバヒ タキコトバアリ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.96
【初出】 『形成』 1960.3 残冬抄 (6)


00711
筋書きの やうには運ばぬ 心かと ながく跼めり 秋海棠の芽に
スジガキノ ヤウニハハコバヌ ココロカト ナガクカガメリ ベゴニアノメニ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.96
【初出】 『短歌新聞』 1958.6 花殻 (18)


00712
萌え早き 蕁麻抜きて 焼べむとし まざまざと疎外 されしを思ふ
モエハヤキ イラクサヌキテ クベムトシ マザマザトソガイ サレシヲオモフ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.97
【初出】 『形成』 1959.4 早春 (2)


00713
蕩揺を こばまぬ水に おとす影 根もとの紅き 菜を洗ひゐて
トウヨウヲ コバマヌミズニ オトスカゲ ネモトノアカキ ナヲアラヒヰテ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.97
【初出】 『短歌』 1958.7 夢うら (4)


00714
詰る手紙 ねぎらふ葉書 などありて かさね置く夜の 心に重く
ナジルテガミ ネギラフハガキ ナドアリテ カサネオクヨノ ココロニオモク

『不文の掟』(四季書房 1960) p.97
【初出】 『形成』 1959.3 季冬のころ (1)


00715
何つなぎ 置きたき心 ことわらむ 返事幾夜も 書きなづみつつ
ナニツナギ オキタキココロ コトワラム ヘンジイクヨモ カキナヅミツツ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.98
【初出】 『短歌研究』 1959.4 占象 (11)


00716
妹の 訳しくれたる ミュッセの詩 たどきなき夜の 机にひらく
イモウトノ ヤクシクレタル ミュッセノシ タドキナキヨノ ツクエニヒラク

『不文の掟』(四季書房 1960) p.98
【初出】 『形成』 1956.8 雨後 (1)


00717
朝靄の いまだなづさふ 木の間より 見え来て児らの 遊べる日向
アサモヤノ イマダナヅサフ コノマヨリ ミエキテコラノ アソベルヒナタ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.98
【初出】 『短歌』 1958.3 夜陰のおと (7)