さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

不文の掟

 
あらはなる       録音に         ふるさとの       酔はぬ時に       
出口の一つ       枯れ枝に        水甕に         夜をこめて       
風荒るる        漸くに         嫁げば必ず       
 
 
 

00683
あらはなる 飢餓を見せつつ けものらは 歩めり雪の 来む夕べにて
アラハナル キガヲミセツツ ケモノラハ アユメリユキノ コムユウベニテ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.85
【初出】 『形成』 1958.3 冬の季語 (1)


00684
録音に 集約されて 妻帯者より 脱落しゆく 闘争のさま
ロクオンニ シュウヤクサレテ サイタイシャヨリ ダツラクシユク トウソウノサマ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.85
【初出】 『形成』 1958.10 葉月 (3)


00685
ふるさとの 樹氷の山の 幻聴を 呼びて月さす 芝生かがやく
フルサトノ ジュヒョウノヤマノ ゲンチョウヲ ヨビテツキサス シバフカガヤク

『不文の掟』(四季書房 1960) p.86
【初出】 『形成』 1959.3 季冬のころ (6)


00686
酔はぬ時に 会はむと言ひて 別れ来つ たたむ羽織の 裏がつめたし
ヨハヌトキニ アハムトイヒテ ワカレキツ タタムハオリノ ウラガツメタシ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.86
【初出】 『形成』 1957.4 浅春 (5)


00687
出口の一つ ふさぎて本を 積める部屋 究極の砦の ごとき思ひす
デグチヒトツ フサギテホンヲ ツメルヘヤ ツヒノトリデノ ゴトキオモヒス

『不文の掟』(四季書房 1960) p.86
【初出】 『短歌研究』 1958.1 夕占 (8)


00688
枯れ枝に 紙のテープの ごとき花 金縷梅活けて わが思惟まづし
カレエダニ カミノテープノ ゴトキハナ マンサクイケテ ワガシイマヅシ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.87
【初出】 『形成』 1958.4 春寒 (4)


00689
水甕に 水をみたして 夜々眠る 母の生き方にも われは及ばぬ
ミズガメニ ミズヲミタシテ ヨヨネムル ハハノイキカタニモ ワレハオヨバヌ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.87
【初出】 『形成』 1958.2 冬木 (6)


00690
夜をこめて 抗へばかく 波だちて 凍らぬ沼と 今朝は思ひつ
ヨヲコメテ アラガヘバカク ナミダチテ コオラヌヌマト ケサハオモヒツ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.87
【初出】 『短歌』 1958.3 夜陰のおと (16)


00691
風荒るる 斜面に麦の 芽吹く見え 自転車押して 人のぼりゆく
カゼアルル シャメンニムギノ メブクミエ ジテンシャオシテ ヒトノボリユク

『不文の掟』(四季書房 1960) p.88
【初出】 『形成』 1957.4 浅春 (4)


00692
漸くに 巣を出でしインコの 雛の水 換へてより日直の 仕事を始む
ヨウヤクニ スヲイデシインコノ ヒナノミズ カヘテヨリニッチョクノ シゴトヲハジム

『不文の掟』(四季書房 1960) p.88
【初出】 『形成』 1956.3 冬草 (11)


00693
嫁げば必ず 不幸になると 思へるや 妹を帰してより ながく寂しむ
トツゲバカナラズ フコウニナルト オモヘルヤ イモウトヲカエシテヨリ ナガクサビシム

『不文の掟』(四季書房 1960) p.88
【初出】 『形成』 1956.4 遠景 (10)