さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

不文の掟

 
秋づける        待たれゐて       太幹に         雨あとの        
掘りあてし       浜荻の         夜の水に        うとくして       
 
 
 

00667
秋づける 日々雲の層 深くして 退嬰をこばむ みづからのこゑ
アキヅケル ヒビクモノソウ フカクシテ タイエイヲコバム ミヅカラノコヱ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.79
【初出】 『形成』 1957.10 秋近く (1)


00668
待たれゐて 急ぐがごとく 一方に 光る穂絮の 空を流らふ
マタレヰテ イソグガゴトク ヒトカタニ ヒカルホワタノ ソラヲナガラフ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.79
【初出】 『形成』 1958.1 秋郊 (2)


00669
太幹に 矢じるし白く 彫られゐて いざなふ暗き 林の奥へ
フトミキニ ヤジルシシロク ホラレヰテ イザナフクラキ ハヤシノオクヘ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.80
【初出】 『形成』 1958.1 秋郊 (3)


00670
雨あとの 刈り田に漂ふ 田舟見つつ 旅人のごとき われの歩みぞ
アマアトノ カリタニタダヨフ ソリミツツ タビトノゴトキ ワレノアユミゾ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.80
【初出】 『形成』 1958.1 秋郊 (10)


00671
掘りあてし 埴輪値踏みし 人らあり 墳ぐるみ既に 夕靄のなか
ホリアテシ ハニワネブミシ ヒトラアリ ツカグルミスデニ ユウモヤノナカ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.80
【初出】 『形成』 1958.3 冬の季語 (2)


00672
浜荻の みだるる河口 水昏れて ひそかに思ひ さかのぼらしむ
ハマオギノ ミダルルカコウ ミズクレテ ヒソカニオモヒ サカノボラシム

『不文の掟』(四季書房 1960) p.81
【初出】 『形成』 1958.1 秋郊 (19)


00673
夜の水に ひびきて稲架の 撓ふ音 しづかにわれを 取り戻しゆく
ヨノミズニ ヒビキテハサノ シナフオト シヅカニワレヲ トリモドシユク

『不文の掟』(四季書房 1960) p.81
【初出】 『短歌』 1958.3 夜陰のおと (19)


00674
うとくして 今日に変らぬ 明日あらむ 重たき帯と 思ひつつ解く
ウトクシテ キョウニカワラヌ アスアラム オモタキオビト オモヒツツトク

『不文の掟』(四季書房 1960) p.81
【初出】 『形成』 1958.1 秋郊 (15)