さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

不文の掟

 
安らぎに        何気なく        傷つけぬ        意識して        
風あれば        南半球へ        復員後は        またたく星       
雨しぶく        遠き日に        責めたつる       
 
 
 

00611
安らぎに 似つつ不信を はぐくむに 栗の花咲く 木立明るむ
ヤスラギニ ニツツフシンヲ ハグクムニ クリノハナサク コダチアカルム

『不文の掟』(四季書房 1960) p.58
【初出】 『形成』 1957.8 古時計 (4)


00612
何気なく 聞きすごせしが 身に沁みぬ わが単衣母が 縫ひゐるといふ
ナニゲナク キキスゴセシカ ミニシミヌ ワガヒトヘハハガ ヌヒヰルトイフ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.58
【初出】 『形成』 1956.8 雨後 (2)


00613
傷つけぬ やうに断る すべはなきか あかりに遠き 椅子占めて待つ
キズツケヌ ヤウニコトワル スベハナキカ アカリニトオキ イスシメテマツ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.59
【初出】 『形成』 1957.1 淡水 (11)


00614
意識して 互に避くる 語彙をもち バスゆるる時 気弱く笑ふ
イシキシテ カタミニサクル ゴイヲモチ バスユルルトキ キヨワクワラフ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.59
【初出】 『形成』 1957.5 風塵 (3)


00615
風あれば 穂草吹かれて ゆるるのみ 疑ひを解かむ などと思ふな
カゼアレバ ホクサフカレテ ユルルノミ ウタガヒヲトカム ナドトオモフナ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.59
【初出】 『埼玉新聞』 1957.1 草の穂 (3)


00616
南半球へ 遁れゆかむなどと 笑ひゐし 君を思ふ或ひは 本意か知れず
ミナミハンキュウヘ ノガレユカムナドト ワラヒヰシ キミヲオモフアルヒハ ホンイカシレズ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.60
【初出】 『短歌』 1956.11 カナダまで (14)


00617
復員後は 山男のやうに 暮らしきと 何をわからせ たくて言ひしぞ
フクインゴハ ヤマオトコノヤウニ クラシキト ナニヲワカラセ タクテイヒシゾ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.60
【初出】 『短歌』 1956.11 カナダまで (2)


00618
またたく星 またたかぬ星 さみしく 立ちどまりたく なりつつ歩む
マタタクホシ マタタカヌホシ サミシク タチドマリタク ナリツツアユム

『不文の掟』(四季書房 1960) p.60
【初出】 『短歌』 1956.11 カナダまで (1)


00619
雨しぶく ホームに立ちつくす 無縁の人と なるかも知れぬ 姑を発たしめて
アメシブク ホームニタチツクス ムエンノヒトト ナルカモシレヌ ハハヲタタシメテ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.61
【初出】 『形成』 1956.6 季春 (10)


00620
遠き日に 見し浜木綿の 群落よ 雑然と本を 重ねて眠る
トオキヒニ ミシハマユウノ グンラクヨ ザツゼントホンヲ カサネテネムル

『不文の掟』(四季書房 1960) p.61
【初出】 『形成』 1957.8 古時計 (2)


00621
責めたつる みづからの声に めざめたり 夢のなかにて われははげしき
セメタツル ミヅカラノコエニ メザメタリ ユメノナカニテ ワレハハゲシキ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.61
【初出】 『形成』 1957.10 秋近く (5)