さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

不文の掟

 
山鳩の         紫蘇の穂の       梢高く         はぐれゆく       
風のなき        遠き空に        ささくれて       足り易き        
 
 
 

00562
山鳩の 啼きかはしゐて 明るきに 草合歓の花を 濡らす雨見ゆ
ヤマバトノ ナキカハシヰテ アカルキニ クサネムノハナヲ ヌラスアメミユ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.38
【初出】 『形成』 1957.11 月かげ (6)


00563
紫蘇の穂の あえかに白き 花と見き 散りつくしつつ 今朝を匂へり
シソノホノ アエカニシロキ ハナトミキ チリツクシツツ ケサヲニオヘリ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.38
【初出】 『形成』 1958.1 秋郊 (8)


00564
梢高く すずろに花の 吹かれゐて 百日紅は 重さ持たぬや
ウレタカク スズロニハナノ フスレヰテ ヒャクジツコウハ オモサモタヌヤ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.39
【初出】 『形成』 1958.1 秋郊 (13)


00565
はぐれゆく 心をつなぎ とむるごと 受話器の奥に 鳴るオルゴオル
ハグレユク ココロヲツナギ トムルゴト ジュワキノオクニ ナルオルゴオル

『不文の掟』(四季書房 1960) p.39
【初出】 『短歌研究』 1958.1 夕占 (9)


00566
風のなき 夜にて無聊に 葉を垂るる 棕櫚の木も闇に 置きて眠りつ
カゼノナキ ヨニテムリョウニ ハヲタルル シュロノキモヤミニ オキテネムリツ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.39
【初出】 『短歌』 1958.7 夢うら (2)


00567
遠き空に 花火あがれる 夜なりしが つらぬきがたき ことも知りゆく
トオキソラニ ハナビアガレル ヨナリシガ ツラヌキガタキ コトモシリユク

『不文の掟』(四季書房 1960) p.40
【初出】 『短歌研究』 1958.1 夕占 (7)


00568
ささくれて 光りゐし水 凪ぎゆけば うす絹のごとき 波紋を浮かす
ササクレテ ヒカリヰシミズ ナギユケバ ウスギヌノゴトキ ハモンヲウカス

『不文の掟』(四季書房 1960) p.40
【初出】 『短歌』 1957.8 古代の石鏃 (14)


00569
足り易き こころみづから 寂しみて 沼のほとりを 朝々かよふ
タリヤスキ ココロミヅカラ サビシミテ ヌマノホトリヲ アサアサカヨフ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.40
【初出】 『短歌』 1957.8 古代の石鏃 (13)