さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

不文の掟

 
二いろの        事務室と        噂撒きて        「叩いても       
校正室の        小さき籠に       約束されし       尾けられて       
ぬきんでて       夢のなかと       花殻の         
 
 
 

00540
二いろの ルージュ日により 使ひ分け 残る若さを をしみつつ生く
フタイロノ ルージュヒニヨリ ツカヒワケ ノコルワカサヲ ヲシミツツイク

『不文の掟』(四季書房 1960) p.30
【初出】 『短歌研究』 1956.7 背後のこゑ (1)


00541
事務室と 部屋とをゆきき するのみの 日々に恋ふ海に 続ける牧場
ジムシツト ヘヤトヲユキキ スルノミノ ヒビニコフウミニ ツヅクボクジョウ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.30
【初出】 『短歌研究』 1956.7 背後のこゑ (19)


00542
噂撒きて ゐることむしろ たのしげに 人はするすると 林檎をむけり
ウワサマキテ ヰルコトムシロ タノシゲニ ヒトハスルスルト リンゴヲムケリ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.31
【初出】 『形成』 1956.7 雨月 (2)


00543
「叩いても 鳴らぬキイ持つ 人」と書き 日記閉づれば やや安らぎぬ
タタイテモ ナラヌキイモツ ヒトトカキ ニッキトヅレバ ヤヤヤスラギヌ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.31
【初出】 『短歌研究』 1956.7 背後のこゑ (18)


00544
校正室の われに幾度も 来る電話 かかる怱忙を いつよりか愛す
コウセイシツノ ワレニイクドモ クルデンワ カカルソウボウヲ イツヨリカアイス

『不文の掟』(四季書房 1960) p.31
【初出】 『形成』 1956.5 落花 (1)


00545
小さき籠に 移されしつがひの 頬白も いつか鎮まり 夕ぐれて来ぬ
チイサキカゴニ ウツサレシツガヒノ ホオジロモ イツカシズマリ ユウグレテキヌ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.32
【初出】 『形成』 1956.6 季春 (2)


00546
約束されし 未来など 誰も持たず 鰻食べむと 連れだちて出づ
ヤクソクサレシ ミライナド ダレモモタズ ウナギタベムト ツレダチテイヅ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.32
【初出】 『形成』 1956.8 雨後 (3)


00547
尾けられて ゐるごとくまた ふり返り 自転車の灯に 照らし出されつ
ツケラレテ ヰルゴトクマタ フリカエリ ジテンシャノヒニ テラシダサレツ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.32
【初出】 『短歌研究』 1956.7 背後のこゑ (11)


00548
ぬきんでて 如何に照るやと 恋ほしけれ かの塔を月下に 見たることなし
ヌキンデテ イカニテルヤト コホシケレ カノトウヲゲッカニ ミタルコトナシ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.33
【初出】 『短歌研究』 1956.7 背後のこゑ (16)


00549
夢のなかと いへども髪を ふりみだし 人を追ひゐき ながく忘れず
ユメノナカト イヘドモカミヲ フリミダシ ヒトヲオヒヰキ ナガクワスレズ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.33
【初出】 『短歌研究』 1956.7 背後のこゑ (15)


00550
花殻の 吹き溜りゐて 沼尻は 水たゆたへり ながき夕凪ぎ
ハナガラノ フキダマリヰテ ヌマジリハ ミズタユタヘリ ナガキユウナギ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.33