さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

不文の掟

 
せかさるるは      さみどりの       葉洩れ陽を       声嗄れて        
みづからは       静かなる        G線を         明け方は        
 
 
 

00522
せかさるるは われにあらずや 時間来て 池のボートを 呼び戻す声
セカサルルハ ワレニアラズヤ ジカンキテ イケノボートヲ ヨビモドスコエ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.23
【初出】 『短歌研究』 1956.7 背後のこゑ (2)


00523
さみどりの 息たつごとき 麦生来て 憎しみに遠し 今のこころも
サミドリノ イキタツゴトキ ムギフキテ ニクシミニトオシ イマノココロモ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.23
【初出】 『形成』 1956.6 季春 (5)


00524
葉洩れ陽を 乱しつつ飛ぶ 蝶見ゐて 忽ちわれは 眩みてしまふ
ハモレビヲ ミダシツツトブ チョウミヰテ タチマチワレハ クラミテシマフ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.24
【初出】 『形成』 1956.6 季春 (4)


00525
声嗄れて けうとき午後の 窓の外 何か倒れて はや音もなし
コエカレテ ケウトキゴゴノ マドノソト ナニカタオレテ ハヤオトモナシ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.24
【初出】 『形成』 1956.6 季春 (1)


00526
みづからは つひに光らぬ 天体に たぐへて身を歎く ことも久しも
ミヅカラハ ツヒニヒカラヌ テンタイニ タグヘテミヲナゲク コトモヒサシモ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.24
【初出】 『短歌研究』 1956.7 背後のこゑ (4)


00527
静かなる 影置く木立 遠ければ 虚しきものを また恋はむとす
シズカナル カゲオクコダチ トオケレバ ムナシキモノヲ マタコハムトス

『不文の掟』(四季書房 1960) p.25
【初出】 『形成』 1956.4 遠景 (13)


00528
G線を 張り替へて弾く ヴァイオリン 誰が名器より 冽き音たてよ
ゲイセンヲ ハリカヘテヒク ヴァイオリン タガメイキヨリ キヨキネタテヨ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.25
【初出】 『形成』 1956.5 落花 (9)


00529
明け方は 霧深からむと いふ予報 聴きてより夜の 思ひさまよふ
アケガタハ キリフカカラムト イフヨホウ キキテヨリヨノ オモヒサマヨフ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.25
【初出】 『形成』 1956.10 ものの音 (1)