さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

不文の掟

 
窓ガラスの       夢見しは        風つのる        永劫の         
這ひ松の        荻叢に         何に執して       昏れてゆく       
まざまざと       水光り         山原の         
 
 
 

00511
窓ガラスの 曇り拭く手も まみれゐて 夜汽車に碓氷 越えゆかむとす
マドガラスノ クモリフクテモ マミレヰテ ヨギシャニウスヒ コエユカムトス

『不文の掟』(四季書房 1960) p.19
【初出】 『短歌研究』 1956.7 背後のこゑ (6)


00512
夢見しは 無風の曠野ぞ 火山礫を 吹き飛ばし来る 風にたじろぐ
ユメミシハ ムフウノコウヤゾ カザンレキヲ フキトバシクル カゼニタジログ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.19
【初出】 『形成』 1956.2 火山灰地 (4)


00513
風つのる 火山灰地の ただ中に また人を降ろし バスは去りゆく
カゼツノル カザンバイチノ タダナカニ マタヒトヲオロシ バスハサリユク

『不文の掟』(四季書房 1960) p.20
【初出】 『形成』 1956.2 火山灰地 (5)


00514
永劫の 荒蕪と思ふ 野を過ぎて 穂すすきそよぐ 一地帯あり
エイゴウノ コウブトオモフ ノヲスギテ ホススキソヨグ イチチタイアリ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.20
【初出】 『形成』 1956.2 火山灰地 (9)


00515
這ひ松の 青むのみなる 火口原 またひとしきり 砂塵はしまく
ハヒマツノ アオムノミナル カコウゲン マタヒトシキリ サジンハシマク

『不文の掟』(四季書房 1960) p.20
【初出】 『形成』 1956.2 火山灰地 (3)


00516
荻叢に 野川あふるる ひとところ 何ぞ踏み越え がたき思ひは
ヲギムラニ ノカワアフルル ヒトトコロ ナンゾフミコエ ガタキオモヒハ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.21
【初出】 『形成』 1956.2 火山灰地 (10)


00517
何に執して 苦しめる身ぞ 岩漿は たたなはり劫初の 地形をとどむ
ナンニシュウシテ クルシメルミゾ ガンショウハ タタナハリゴウショノ チケイヲトドム

『不文の掟』(四季書房 1960) p.21
【初出】 『形成』 1956.2 火山灰地 (6)


00518
昏れてゆく 岩場にひとり バス待てば 虜囚の思ひ 身をせばめ来る
クレテユク イハバニヒトリ バスマテバ リョシュウノオモヒ ミヲセバメクル

『不文の掟』(四季書房 1960) p.21
【初出】 『形成』 1956.2 火山灰地 (7)


00519
まざまざと 硫黄臭へば 目を閉ぢて 火口丘をくだる バスにゆらるる
マザマザト イオウニオヘバ メヲトヂテ カコウキュウヲクダル バスニユラルル

『不文の掟』(四季書房 1960) p.22
【初出】 『形成』 1956.2 火山灰地 (8)


00520
水光り 流るる沢の 夕じめり 今は帰らむ 河口の街へ
ミズヒカリ ナガルルサワノ ユウジメリ イマハカエラム カコウノマチヘ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.22
【初出】 『林鐘』 1957.5/6 季春 (6)


00521
山原の 不毛を見尽くし 来て幾日 遠く光りゐたる 湖を恋ふ
ヤマハラノ フモウヲミツクシ キテイクヒ トオクヒカリヰタル ミズウミヲコフ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.22
【初出】 『形成』 1956.2 火山灰地 (12)