さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

不文の掟

 
いつのまに       一角より        合はせねば       ガード越えて      
転身を         夜光虫を        夜をこめて       めさめゐて       
 
 
 

00495
いつのまに 東京を去りし 友ならむ 風の中に麦踏む 日々と告げ来ぬ
イツノマニ トウキョウヲサリシ トモナラム カゼノナカニムギフム ヒビトツゲキヌ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.13
【初出】 『形成』 1957.6 風の中 (3)


00496
一角より 崩しゆくほか なき仕事 画家に会ふべく 足袋を履き替ふ
イッカクヨリ クズシユクホカ ナキシゴト ガカニアフベク タビヲハキカフ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.13
【初出】 『形成』 1957.5 風塵 (1)


00497
合はせねば 合はぬ歩調の 寂しきに 声はげまして もの言はむとす
アハセネバ アハヌホチョウノ サビシキニ コエハゲマシテ モノイハムトス

『不文の掟』(四季書房 1960) p.14
【初出】 『形成』 1957.5 風塵 (4)


00498
ガード越えて 速度ましたる 夜の電車 翻意うながす 声なほ追ひ来
ガードコエテ ソクドマシタル ヨノデンシャ ホンイウナガス コエナホオヒク

『不文の掟』(四季書房 1960) p.14
【初出】 『形成』 1957.5 風塵 (5)


00499
転身を 信じたる日も 遠くして まとへるものの 重くなづさふ
テンシンヲ シンジタルヒモ トオクシテ マトヘルモノノ オモクナヅサフ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.14
【初出】 『形成』 1957.4 浅春 (6)


00500
夜光虫を 沈めしごとき 記憶にて 昏れて水嵩 増し来る運河
ヤコウチュウヲ シズメシゴトキ キオクニテ クレテミズカサ マシクルウンガ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.15


00501
夜をこめて 松のしづれの 音ばかり 身を脅やかす 足音もなし
ヨヲコメテ マツノシヅレノ オトバカリ ミヲオビヤカス アシオトモナシ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.15
【初出】 『形成』 1956.6 季春 (3)


00502
めさめゐて 過ぎゆく夜半の 地震を知る ここよりつひに 遁れ得ざらむ
メサメヰテ スギユクヨワノ ナヰヲシル ココヨリツヒニ ノガレエザラム

『不文の掟』(四季書房 1960) p.15
【初出】 『形成』 1957.8 古時計 (3)