さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

不文の掟

 
歩みつつ        完きは         たどきなく       その場限りの      
橋杭に         足どりの        雨となる        石室の         
 
 
 

00487
歩みつつ 振り返る視野 昏れてゐて 海藻のやうに 枯れ木がゆらぐ
アユミツツ フリカエルシヤ クレテヰテ カイソウノヤウニ カレキガユラグ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.10
【初出】 『埼玉新聞』 1957.1 草の穂 (1)


00488
完きは 一つとてなき 阿羅漢の わらわらと起ち あがる夜無きや
マツタキハ ヒトツトテナキ アラカンノ ワラワラトタチ アガルヨナキヤ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.10
【初出】 『形成』 1957.12 危惧 (4)


00489
たどきなく 耳を澄ませば 身もだえて 落葉を急ぐ 木々と思ほゆ
タドキナク ミミヲスマセバ ミモダエテ ラクエフヲイソグ キギトオモホユ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.11
【初出】 『形成』 1956.2 火山灰地 (13)


00490
その場限りの 言葉と知りつつ 囚はるる おろそかにわが 応へしことも
ソノバカギリノ コトバトシリツツ トラハルル オロソカニワガ コタヘシコトモ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.11
【初出】 『形成』 1957.7 雨後 (4)


00491
橋杭に 堰かれつつ 流れゆくばかり 河はつくづく 海より寂し
ハシグイニ セカレツツ ナガレユクバカリ カワハツクヅク ウミヨリサビシ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.11
【初出】 『形成』 1956.5 落花 (3)


00492
足どりの 乱れて歩み ゐしわれか 追ひ抜きざまに 人の振り向く
アシドリノ ミダレテアユミ ヰシワレカ オヒヌキザマニ ヒトノフリムク

『不文の掟』(四季書房 1960) p.12
【初出】 『形成』 1956.12 風前 (2)


00493
雨となる 気配に昏れて まなうらに 影かさねつつ 人のゆきかふ
アメトナル ケハイニクレテ マナウラニ カゲカサネツツ ヒトノユキカフ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.12
【初出】 『形成』 1957.11 月かげ (3)


00494
石室の 底に睡り ゐしごとし 遠きしづくの 音に醒めつつ
イシムロノ ソコヒニネムリ ヰシゴトシ トオキシヅクノ オトニサメツツ

『不文の掟』(四季書房 1960) p.12
【初出】 『短歌』 1958.9 逸れ矢 (7)