さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

まぼろしの椅子

 
聲の限り        今一たび        胸深く         時へなば        
いかなる家の      淺き瀬の        畑中は         
 
 
 

00393
聲の限り 呼びたきみ名も ある如し 谷越えて迫る 山のなだりよ
コエノカギリ ヨビタキミナモ アルゴトシ タニコエテセマル ヤマノナダリヨ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.155
【初出】 『朱扇』 1951.10 深山路 (1)


00394
今一たび 夢を見むとも 願はねど 追ひつめて寂し 遠き日の思慕
イマヒトタビ ユメヲミムトモ ネガハネド オヒツメテサビシ トオキヒノシボ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.155
【初出】 『朱扇』 1952.3 狭山紀行 (4)


00395
胸深く 古き牧歌の 鳴るごとし 暮れゆく原に 尾花そよげり
ムネフカク フルキボッカノ ナルゴトシ クレユクハラニ オバナソヨゲリ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.156
【初出】 『朱扇』 1953.1 信濃紀行 (4)


00396
時へなば 忘れも得べし 思ひ出の 中にのみ住む おもかげとして
トキヘナバ ワスレモウベシ オモヒデノ ナカニノミスム オモカゲトシテ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.156
【初出】 『朱扇』 1952.3 狭山紀行 (5)


00397
いかなる家の 建ちゆくならむ 道の邊の 地鎭めの式に 人等集へる
イカナルイエノ タチユクナラム ミチノベノ ヂシズメノシキニ ヒトラツドヘル

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.156
【初出】 『朱扇』 1953.1 信濃紀行 (5)


00398
淺き瀬の さざなみ光る 千曲川 堤の道を 人はゆきかふ
アサキセノ サザナミヒカル チクマガワ ツツミノミチヲ ヒトハユキカフ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.157
【初出】 『朱扇』 1953.1 信濃紀行 (6)


00399
畑中は 籾殻を燒く うすけむり 淺間嶺もいつか 暮れゆきにけり
ハタナカハ モミガラヲヤク ウスケムリ アサマネモイツカ クレユキニケリ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.157
【初出】 『朱扇』 1953.1 信濃紀行 (7)