さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

まぼろしの椅子

 
抗はず         被害妄想と       夜に入りて       用心深く        
踏切りの        女歌手の        厭世的に        醉ひて遲く       
 
 
 

00376
抗はず 無氣力になりて ゆくわれを 進歩とみなす 一人か君も
アラガハズ ムキリョクニナリテ ユクワレヲ シンポトミナス ヒトリカキミモ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.148
【初出】 『朱扇』 1953.3/4 冬の日 (5)


00377
被害妄想と 片附けられて 立ちて來つ 夫にもわれは 理解されざる
ヒガイモウソウト カタヅケラレテ タチテキツ ツマニモワレハ リカイサレザル

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.148
【初出】 『朱扇』 1953.3/4 冬の日 (4)


00378
夜に入りて いらだてる君は 本棚の 位置など變へて 見むとするらし
ヨニイリテ イラダテルキミハ ホンダナノ イチナドカヘテ ミムトスルラシ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.149
【初出】 『朱扇』 1951.11 日照り雨 (6)


00379
用心深く 言葉少なに 振舞へば 嫁の位置にも 堪へ得るごとし
ヨウジンブカク コトバスクナニ フルマヘバ ヨメノイチニモ タヘウルゴトシ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.149
【初出】 『朱扇』 1951.11 日照り雨 (2)


00380
踏切りの つかぬままに慚く 保ちゐる 平安か毛糸 編みつつ寂し
フンギリノ ツカヌママニシバラク タモチヰル ヘイアンカケイト アミツツサビシ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.149
【初出】 『朱扇』 1953.3/4 冬の日 (6)


00381
女歌手の 手をのべて歌ふ ブルースに 何のはずみか 涙こぼれつ
オンナカシュノ テヲノベテウタフ ブルースニ ナンノハズミカ ナミダコボレツ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.150
【初出】 『朱扇』 1952.7 雨季 (8)


00382
厭世的に なりゐるわれと 知りながら 苦しまぬ夫か 今宵も遲し
エンセイテキニ ナリヰルワレト シリナガラ クルシマヌツマカ コヨイモオソシ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.150
【初出】 『朱扇』 1952.4 みぞれの街 (6)


00383
醉ひて遲く 歸れる夫の 表情の 寂しげなれば 立ちて寄りゆく
ヨヒテオソク カエレルツマノ ヒョウジョウノ サビシゲナレバ タチテヨリユク

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.150
【初出】 『朱扇』 1951.11 日照り雨 (7)