さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

まぼろしの椅子

 
主張せずに       君の心を        現在こそ        もの書きて       
夜半覺めて       アマリリスの      纒まりなく       依賴心を        
轉職の         諦めとも        ヘッセ讀みつつ     
 
 
 

00341
主張せずに 理解し合ふ日は いつ來らむ 茶を替へに立つ 君のそばより
シュチョウセズニ リカイシアフヒハ イツクラム チャヲカヘニタツ キミノソバヨリ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.134
【初出】 『形成』 1953.11 雑記 (1)


00342
君の心を 見抜かむ底意 持つことも 寂しくなりぬ 夜更くるままに
キミノココロヲ ミヌカムソコイ モツコトモ サビシクナリヌ ヨフクルママニ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.134
【初出】 『形成』 1953.10 職掌 (8)


00343
現在こそ 總べてと言ひ捨てし 君の言葉 聞きしよりながく 心冷えゐる
ゲンザイコソ スベテトイヒステシ キミノコトバ キキシヨリナガク ココロヒエヰル

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.135
【初出】 『形成』 1953.7 寂しき言葉 (1)


00344
もの書きて 更かす幾夜の 續きつつ 明るく描く 未來もあらず
モノカキテ フカスイクヨノ ツヅキツツ アカルクエガク ミライモアラズ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.135
【初出】 『形成』 1953.7 寂しき言葉 (4)


00345
夜半覺めて それよりながく 雨を聽く 何の夢見て 泣きゐしならむ
ヨワサメテ ソレヨリナガク アメヲキク ナンノユメミテ ナキヰシナラム

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.135
【初出】 『形成』 1953.7 寂しき言葉 (3)


00346
アマリリスの 花の香にふと 蘇へる 印象薄れゐし かの日の言葉
アマリリスノ ハナノカニフト ヨミガヘル インショウウスレヰシ カノヒノコトバ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.136
【初出】 『形成』 1953.7 寂しき言葉 (7)


00347
纒まりなく なれる心よ 人を恃まず 生きむ希ひにも 疲れ來りて
マトマリナク ナレルココロヨ ヒトヲタノマズ イキムネガヒニモ ツカレキタリテ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.136
【初出】 『形成』 1953.7 寂しき言葉 (6)


00348
依賴心を あまり持たぬ性も 女として 不幸と思ふ 年經るままに
イライシンヲ アマリモタヌサガモ オミナトシテ フコウトオモフ トシヘルママニ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.136
【初出】 『形成』 1953.10 職掌 (11)


00349
轉職の 時機かとも思ふ 頰杖つきて 食卓に一人 殘り居りつつ
テンショクノ ジキカトモオモフ ホホヅエツキテ ショクタクニヒトリ ノコリオリツツ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.137
【初出】 『形成』 1953.10 職掌 (10)


00350
諦めとも 満足とも つかぬ靜けさに 幾日か速く 過ぐることあり
アキラメトモ マンゾクトモ ツカヌシズケサニ イクニチカハヤク スグルコトアリ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.137
【初出】 『形成』 1953.11 雜記 (2)


00351
ヘッセ讀みつつ 何時か眠りに おちてゆく 明日を信ずる 如き姿態に
ヘッセヨミツツ イツカネムリニ オチテユク アスヲシンズル ゴトキシタイニ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.137
【初出】 『形成』 1953.10 職掌 (9)