さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

まぼろしの椅子

 
少し威張つて      報いらるるを      刷り上げし       一日彼と        
苦しめられし      靑年團體の       ありのままを      表紙繪を        
蘇芳色に        折り合ひの       
 
 
 

00304
少し威張つて 見たいのならむと 思ひ直し 書類整理を また始めたり
スコシイバツテ ミタイノナラムト オモヒナオシ ショルイセイリヲ マタハジメタリ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.120
【初出】 『朱扇』 1952.6 事務服 (1)


00305
報いらるるを 秘かに期待 してゐしか 居殘りて謄寫 なしつつ寂し
ムクイラルルヲ ヒソカニキタイ シテヰシカ イノコリテトウシャ ナシツツサビシ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.120
【初出】 『形成』 1953.5 風の音 (5)


00306
刷り上げし 書類綴ぢゆく 夜の事務所 マフラーを擴げて 膝覆ひつつ
スリアゲシ ショルイトジユク ヨノジムショ マフラーヲヒロゲテ ヒザオオヒツツ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.121
【初出】 『形成』 1953.5 風の音 (6)


00307
一日彼と 口をきかざりし 快感も はかなし一人 殘務なしつつ
ヒトヒカレト クチヲキカザリシ カイカンモ ハカナシヒトリ ザンムナシツツ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.121
【初出】 『形成』 1953.6 あけくれ (1)


00308
苦しめられし ことも忘れむ 中年の 人のもつ寂しき 打算と思ひて
クルシメラレシ コトモワスレム チュウネンノ ヒトノモツサビシキ ダサントオモヒテ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.121
【初出】 『形成』 1953.6 あけくれ (2)


00309
靑年團體の 再統合の要を しきりに説く 横顏憎く まじまじと見つ
セイネンダンタイノ サイトウゴウノカナメヲ シキリニトク ヨコガオニクク マジマジトミツ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.122
【初出】 『形成』 1955.1 微雨 (5)


00310
ありのままを 言ひしかばまた 憎まれむ 會果てて一人 歸り來りぬ
アリノママヲ イヒシカバマタ ニクマレム カイハテテヒトリ カエリキタリヌ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.122
【初出】 『形成』 1953.6 あけくれ (3)


00311
表紙繪を たのみに來にし 谷の村 菜種の花が 一めんに燃ゆ
ヒョウシエヲ タノミニキニシ ヤツノムラ ナタネノハナガ イチメンニモユ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.122
【初出】 『形成』 1953.6 あけくれ (6)


00312
蘇芳色に 何の花か咲ける 丘の上に わが訪ひゆかむ アトリエが見ゆ
スオウイロニ ナンノハナカサケル オカノウエニ ワガトヒユカム アトリエガミユ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.123
【初出】 『形成』 1953.6 あけくれ (7)


00313
折り合ひの つかぬまま今日は 別れ來つ 夕べの霧に 耳がつめたし
オリアヒノ ツカヌママキョウハ ワカレキツ ユウベノキリニ ミミガツメタシ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.123
【初出】 『形成』 1953.6 あけくれ (4)