さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

まぼろしの椅子

 
編輯者なる       彩りも         編輯の         晝食後を        
語氣荒く        醉ひにまぎらして    人を庇ひて       おのづから       
頭の皮膚の       助成金も        子供會を        基地の近き       
わが知らぬ       
 
 
 

00267
編輯者なる 肩書ゆゑに もてなされしかと 思ふ歸りの バスに揺られつつ
ヘンシュウシャナル カタガキユヱニ モテナサレシカト オモフカエリノ バスニユラレツツ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.106
【初出】 『形成』 1954.4 波紋 (1)


00268
彩りも なきパンフレットを 月々に 編みつつ何時まで 勤め得む身ぞ
イロドリモ ナキパンフレットヲ ツキヅキニ アミツツイツマデ ツトメエムミゾ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.106
【初出】 『形成』 1954.4 波紋 (2)


00269
編輯の 中立のために 捨てねばならぬ 論説一つ 讀み返しゆく
ヘンシュウノ チュウリツノタメニ ステネバナラヌ ロンセツヒトツ ヨミカエシユク

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.107
【初出】 『形成』 1954.4 波紋 (3)


00270
晝食後を 今日も襲はるる 懈怠感 廊下には既に 印刷屋が待つ
チュウショクゴヲ キョウモオソハルル ケタイカン ロウカニハスデニ インサツヤガマツ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.107
【初出】 『形成』 1954.4 波紋 (4)


00271
語氣荒く 誤植を指摘し 來し手紙 朝よりふさぎ ゐしわれを衝つ
ゴキアラク ゴショクヲシテキシ コシテガミ アサヨリフサギ ヰシワレヲツツ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.107
【初出】 『形成』 1954.5 危き未来 (9)


00272
醉ひにまぎらして わが編輯の マンネリズムを 衝きし一人も 歸りゆきたり
ヨヒニマカギラシテ ワガヘンシュウノ マンネリズムヲ ツキシヒトリモ カエリユキタリ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.108
【初出】 『形成』 1954.4 波紋 (5)


00273
人を庇ひて みづからの立場を 狭めゆく われかと思ふ 協議終へ來て
ヒトヲカバヒテ ミヅカラノタチバヲ セバメユク ワレカトオモフ キョウギオヘキテ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.108
【初出】 『形成』 1954.4 波紋 (6)


00274
おのづから 守勢に立てる 如き一日 押し默り原稿を 割り付けてゆく
オノヅカラ シュセイニタテル ゴトキヒトヒ オシダマリゲンコウヲ ワリツケテユク

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.108
【初出】 『形成』 1954.8 余波 (4)


00275
頭の皮膚の 痛み來れば 鬢どめを 外しつつ要點 速記を續く
アタマノヒフノ イタミキタレバ ビンドメヲ ハズシツツヨウテン ソッキヲツヅク

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.109
【初出】 『形成』 1954.8 余波 (5)


00276
助成金も 削られたりと 言ふを聞く 「子供守る會」の 記事取りに來て
ジョセイキンモ ケズラレタリト イフヲキク コドモマモルカイノ キジトリニキテ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.109
【初出】 『形成』 1954.7 風塵 (1)


00277
子供會を 終へて幼な等 歸りゆけば ただ靜かなり 庫裏の君が部屋
コドモカイヲ オヘテオサナラ カエリユケバ タダシズカナリ クリノキミガヘヤ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.109
【初出】 『形成』 1954.7 風塵 (2)


00278
基地の近き ことにも觸れつつ 子供會を 守り抜かむと 語る君若し
キチノチカキ コトニモフレツツ コドモカイヲ マモリヌカムト カタルキミワカシ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.110
【初出】 『形成』 1954.7 風塵 (3)


00279
わが知らぬ 讀者より勵まし 來し手紙 校正を終へたる 夕べに讀めり
ワガシラヌ ドクシャヨリハゲマシ コシテガミ コウセイヲオヘタル ユウベニヨメリ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.110
【初出】 『形成』 1954.7 風塵 (4)