さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

まぼろしの椅子

 
うちつけに       眞實は         憎むより        空白の         
減らし目を       せめて深き       うらぶれし       君が心を        
君と同じ        告げ難き        
 
 
 

00257
うちつけに 理解さるると 思はねど パンセの句引きて 返事書き終ふ
ウチツケニ リカイサルルト オモハネド パンセノクヒキテ ヘンジカキオフ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.102
【初出】 『形成』 1954.1 周辺 (6)


00258
眞實は 必ず通らむ などと説きて 世事にはうとき 敎師なりしよ
シンジツハ カナラズトオラム ナドトトキテ セジニハウトキ キョウシナリシヨ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.102
【初出】 『形成』 1954.1 周辺 (5)


00259
憎むより 愍れめば心は 休まると 悟り來ぬ二十代も 過ぎむとしつつ
ニクムヨリ アワレメバココロハ ヤスマルト サトリコヌニジュウダイモ スギムトシツツ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.103
【初出】 『形成』 1954.2 母 (1)


00260
空白の 時間をかき消す よすがとも 指痛めつつ もの編み續く
クウハクノ ジカンヲカキケス ヨスガトモ ユビイタメツツ モノアミツヅク

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.103
【初出】 『形成』 1954.4 波紋 (7)


00261
減らし目を 忘れて編みゐし 袖を解く 夜半の思ひの はずむことなし
ヘラシメヲ ワスレテアミヰシ ソデヲトク ヨワノオモヒノ ハズムコトナシ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.103
【初出】 『形成』 1954.4 波紋 (8)


00262
せめて深き 眠りを得たし 今宵ひとり 食べ餘したる 林檎が匂ふ
セメテフカキ ネムリヲエタシ コヨイヒトリ タベアマシタル リンゴガニオフ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.104
【初出】 『形成』 1954.4 波紋 (9)


00263
うらぶれし 夜半の心ぞ 眠れぬままに 起き出でて鍋を 磨き始めぬ
ウラブレシ ヨワノココロゾ ネムレヌママニ オキイデテナベヲ ミガキハジメヌ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.104
【初出】 『形成』 1954.4 波紋 (10)


00264
君が心を 占めゐるは何ぞ ボヘミアンの 如き貌して 夜半歸り來ぬ
キミガココロヲ シメヰルハナンゾ ボヘミアンノ ゴトキカオシテ ヨワカエリコヌ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.104
【初出】 『形成』 1954.4 波紋 (11)


00265
君と同じ 見方なし得ぬ 寂しさも 超えゆかむながき 月日をかけて
キミトオナ゛シ ミカタナシエヌ サビシサモ コエユカムナガキ ツキヒヲカケテ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.105
【初出】 『形成』 1954.2 母 (3)


00266
告げ難き 悲しみ持つと 知る母か 薔薇切りて驛まで 見送りくれぬ
ツゲガタキ カナシミモツト シルハハカ バラキリテエキマデ ミオクリクレヌ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.105
【初出】 『形成』 1954.9 砂礫 (9)