さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

まぼろしの椅子

 
冷たき女        それぞれに       芥燒きし        花の木など       
立ち直り        子は鎹         一氣に坂を       別れ住むと       
息詰めて        讀みさしの       藤浪も         木蓮の         
 
 
 

00239
冷たき女 などと噂されて ゐるも知る 憎み切れず永く わが苦しむに
ツメタキオンナ ナドトウワササレテ ヰルモシル ニクミキレズナガク ワガクルシムニ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.94
【初出】 『形成』 1954.6 流離 (1)


00240
それぞれに 孤獨ゆゑ手を つながむと 言ひくれし友にも 久しく逢へず
ソレゾレニ コドクユヱテヲ ツナガムト イヒクレシトモニモ ヒサシクアヘズ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.94
【初出】 『形成』 1954.6 流離 (2)


00241
芥燒きし 跡を見廻り來て 灯をともす 今宵は母に 便りを書かむ
アクタヤキシ アトヲミマワリキテ ヒヲトモス コヨイハハハニ タヨリヲカカム

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.95
【初出】 『形成』 1954.6 流離 (4)


00242
花の木など 植ゑて住むべき 家持つは 何時の日ぞ部屋の 隅に炊げり
ハナノキナド ウヱテスムベキ イエモツハ イツノヒゾヘヤノ スミニカシゲリ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.95
【初出】 『形成』 1954.6 流離 (5)


00243
立ち直り ゆきたし君の 背離さへ 一つのアンチ テーゼとなして
タチナオリ ユキタシキミノ ハイリサヘ ヒトツノアンチ テーゼトナシテ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.95
【初出】 『形成』 1954.6 流離 (6)


00244
子は鎹 などと言ひ合ひて 子無きわれの 別れ住めるを 人のはかなむ
コハカスガヒ ナドトイヒアヒテ コナキワレノ ワカレスメルヲ ヒトノハカナム

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.96
【初出】 『形成』 1954.8 余波 (1)


00245
一氣に坂を 驅け下りる如き その末路を 思へば君も 寂しき一人
イッキニサカヲ カケオリルゴトキ ソノマツロヲ オモヘバキミモ サビシキヒトリ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.96
【初出】 『形成』 1954.8 余波 (2)


00246
別れ住むと 知らず來し君が 敎へ子ら 九時まで待たせて 歸しやりたり
ワカレスムト シラズコシキミガ オシヘゴラ クジマデマタセテ カエシヤリタリ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.96
【初出】 『形成』 1954.8 余波 (3)


00247
息詰めて 向ひ風に堪ふる 姿勢とも 人を疎みて こもる日續く
イキツメテ ムカヒカゼニタフル シセイトモ ヒトヲウトミテ コモルヒツヅク

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.97
【初出】 『形成』 1954.7 風塵 (8)


00248
讀みさしの 聖書ロマ書の 一章を 今日來し妹も 母も見つらむ
ヨミサシノ セイショロマショノ イッショウヲ キョウコシイモウトモ ハハモミツラム

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.97
【初出】 『形成』 1954.7 風塵 (7)


00249
藤浪も 美し來よと 便りくれし 奈良の敎へ子を 一日思へり
フジナミモ ウツクシキヨト タヨリクレシ ナラノオシヘゴヲ ヒトヒオモヘリ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.97
【初出】 『形成』 1954.7 風塵 (10)


00250
木蓮の 落花一ひら 拾ひ上ぐ 女一人生きて ゆかねばならぬ
モクレンノ ラッカヒトヒラ ヒロヒアグ オンナヒトリイキテ ユカネバナラヌ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.98
【初出】 『形成』 1954.6 流離 (8)