さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

まぼろしの椅子

 
幼な子を        ねぎらはれ       あと一年は       防水液は        
未亡人の        ユモレスクの      迂曲しつつ       背高き         
 
 
 

00192
幼な子を 背に攀ぢさせて なごみいましき まかり來て心 深くぬくもる
オサナゴヲ セニヨジサセテ ナゴミイマシキ マカリキテココロ フカクヌクモル

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.76
【初出】 『形成』 1954.11 教職 (7)


00193
ねぎらはれ ゐたるを思ふ 別れ來て 夜の靄にまぎるる 如く歩めり
ネギラハレ ヰタルヲオモフ ワカレキテ ヨノモヤニマギルル ゴトクアユメリ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.76
【初出】 『形成』 1955.5 春寒 (8)


00194
あと一年は 着ねばならぬコート 窓に吊り 防水液を 吹きつけてゆく
アトイチネンハ キネバナラヌコート マドニツリ ボウスイエキヲ フキツケテユク

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.77
【初出】 『短歌』 1954.11 古き樂譜 (3)


00195
防水液は 塗るかたへより 乾きゆく 縞のパラソル 廻しつつ塗る
ボウスイエキハ ヌルカタヘヨリ カワキユク シマノパラソル マワシツツヌル

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.77


00196
未亡人の 姉妹が住む 隣の部屋 今朝は髪洗ひ なごめるらしも
ミボウジンノ シマイガスム トナリノヘヤ ケサハカミアラヒ ナゴメルラシモ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.77
【初出】 『形成』 1955.4 残夢 (3)


00197
ユモレスクの ふし吟み 階くだる 逢はば苦しむ われと思ふに
ユモレスクノ フシクチズサミ カイクダル アハバクルシム ワレトオモフニ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.78
【初出】 『形成』 1955.4 残夢 (1)


00198
迂曲しつつ 生くる身と思ひ 歩めるに キャメラマンが肩 聳して過ぐ
ウキョクシツツ イクルミトオモヒ アユメルニ キャメラマンガカタ ソビヤカシテスグ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.78
【初出】 『形成』 1955.5 春寒 (9)


00199
背高き 妹に似合ふや 縫ひ終へし 水色のドレスを たたみ眠らむ
セイタカキ イモウトニニアフヤ ヌイオヘシ ミズイロノドレスヲ タタミネムラム

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.78
【初出】 『形成』 1954.8 余波 (10)