さいたま市立大宮図書館/おおみやデジタル文学館 ―歌人・大西民子―

全短歌(10824首)

全短歌(歌集等)

まぼろしの椅子

 
放ち飼ひの       秋草に         みたさるる       羊齒類の        
暮れ果つる       山裾の         よろぼへる       眞向より        
悔さへも        
 
 
 

00175
放ち飼ひの 仔馬ら寄りて 草はめり ひと方に牧の 穂草はなびく
ハナチガヒノ コウマラヨリテ クサハメリ ヒトカタニマキノ ホグサハナビク

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.69
【初出】 『形成』 1955.1 微雨 (11)


00176
秋草に うもれて返り 咲くつつじ 淺間はあはき 噴煙をまとふ
アキグサニ ウモレテカエリ サクツツジ アサマハアハキ ケムリヲマトフ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.69
【初出】 『形成』 1955.2 海岸線 (8)


00177
みたさるる 日はとはになき 思慕かとも 秋草枯るる 野に歩み出づ
ミタサルル ヒハトハニナキ シボカトモ アキクサカルル ノニアユミイヅ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.70
【初出】 『形成』 1955.2 海岸線 (9)


00178
羊齒類の 葉先より枯るる 下草を 踏みゆく無礙の こころとなりて
シダルイノ ハサキヨリカルル シタクサヲ フミユクムガイノ ココロトナリテ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.70
【初出】 『形成』 1955.1 微雨 (10)


00179
暮れ果つる まで淺間山見て 歸り來ぬ 日記を閉ぢて のびのびと寢む
クレハツル マデアサマヤマミテ カエリコヌ ニッキヲトヂテ ノビノビトネム

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.70
【初出】 『形成』 1955.2 海岸線 (10)


00180
山裾の 濕原をさまよひ 來し一日 歸らむ人に またこころ寄る
ヤマスソノ シツゲンヲサマヨヒ コシヒトヒ カエラムヒトニ マタココロヨル

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.71
【初出】 『形成』 1955.2 海岸線 (11)


00181
よろぼへる 心よ深き つまづきを 如何に處理して 踏み石とせむ
ヨロボヘル ココロヨフカキ ツマヅキヲ イカニショリシテ フミイシトセム

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.71
【初出】 『形成』 1955.2 海岸線 (12)


00182
眞向より 恚り向け得む 相手にあらぬこと また底ひなき 寂しさを呼ぶ
マッコウヨリ イカリムケエム アイテニアラヌコト マタソコヒナキ サビシサヲヨブ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.71
【初出】 『形成』 1955.2 海岸線 (13)


00183
悔さへも 深くちりばめて 生きなむか 自在に描く 未來は遠し
クイサヘモ フカクチリバメテ イキナムカ ジザイニエガク ミライハトオシ

『まぼろしの椅子』(新典書房 1956) p.72
【初出】 『形成』 1955.2 海岸線 (14)